プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 ファイティングポーズはいつまでも編」

わしがちいこい頃は、「巨人の星」と「タイガーマスク」が小学生の男の子の間で大人気で、わしも次の放送を楽しみに待ったもんやった。今思えば、他のアニメと違うて、主人公のひとつの道に賭ける熱情が平凡な小学生に乗り移って、思い、悩み、苦しみそして開放感を一時感じることができるちゅーんが売りやったんやと思う。これの繰り返しに小学生だけやのうて老いも若きも引き付けられて、一度虜になった人を夢中にさせたんやった。この思い、悩み、苦しみそして開放感を味わうちゅーサイクルを早くしたんが、ポパイやトムとジェリーやと思うんやが、とにかくわしは小学生の頃にこのふたつのアニメに魅了され、最初から最終回までおつき合いしたんやった。親もこのふたりの主人公、星飛雄馬と伊達直人の決してあきらめないちゅー姿勢は正しいと思い込んでくれて、決してこのふたつのアニメを、見たらあかんとは言わんかった。むしろ、母親が「巨人の星」もう始まるでぇ―と空き地で遊んどるわしを呼びに来たくらいやった。そういうことやったんで、「燃えてきたぜ」と言って突然黒目のところを炎に変える星飛雄馬やるり子さんや健太くんのために敢然と悪役レスラーに立ち向かう伊達直人の姿はわしの脳の奥深くに刷り込まれて、ほどよい正義感と忍耐と根性が熟成されたんやった。ほやから仕事や山登りや日々の生活でしんどいことがあっても、しんどーと言いながらもファイティングポーズはいつもとりつづけてきたんやった。そやけど50才を過ぎてからもファイディングポーズを取り続けるんは、ほんま大変や。一番堪えたんが、五十肩や。ファイティングポーズを取ろうにも肩が上がらんかった。上げようとすると痛くて涙が滲んだんや。それでもなんとかやり過ごしたが、次に来たのが肥満やった。40代後半にやっていた筋トレをしても体重が落ちんようになってしもうた。食事を同じだけ取っていたら、いつの間にか体重が10キロ増えていた。風邪
を引いた後、咳がなかなか治らんし、最近では顔、腕、脹脛、指に慢性湿疹ができてなかなか治らんかった。この先もいろんな病気が悪役レスラーのようにかかってきても、「燃えてきたぜ」と言って、ファイティングポーズを取り続けるつもりなんやが、還暦を過ぎた船場はどうしよるんやろ。あいつ最近、グルメリポートと称して、食ってばかりおるから、体重が増えよった。おーい、船場、そんなことやっとったら、長生きでけんぞ。お前、最近、太りすぎや。はいはい、にいさん、痛いとこつかはりました。ぷすーん。なんじゃ、その、ぷすーんちゅーのは。ああ、これは私が痛いところを突かれたから空気が出たんです。ぶすーん。ああ、へーこいてもた。ごめんやで。なんで船場は、そんなに物事を重く受け止めようとするんや。へーこいてもたでええのんとちやうん。ところで船場、お前最近、文豪ディケンズはんのこと何もしとらんが、どうするつもりなんや。いえいえ、そんなことはありません。今年の10月くらいに『こんにちは、ディケンズ先生2 改訂版』を出版する予定ですし、それが終わったら、第3巻と第4巻が同時に出版できるように頑張るつもりです。この前、表紙絵や挿絵を描いてくださる小澤一雄先生の展覧会にお邪魔して、イラストのことをお願いして来ました。そうかほたら近々3つの本が出る予定なんやな。そうです。で、その後はどうするんや。その後は未定です。『こんにちは、ディケンズ先生』は私のライフワークと考え、現在341話まで書いていますが、とりあえず4巻で終わるようにとホームページに掲載しているものと内容を変えています。仮に第5巻以降を出版することになったら、301話以降は別のストーリーを考えなくてはならないでしょう。登場人物の誰かがいなくなったりするんか。それは読んでのお楽しみということにしましょう。でも基本は永続できるような小説になっていますから、使える駒はずっと持ち続けるつもりです。ですが万一5冊目の出版が可能になったら、『こんにちは、ディケンズ先生』以外の本を出版したいと考えています。ただそのためには船場弘章の知名度が上がることと出版費用が必要ですから、今のところは可能性は極めて低いと考えています。わしは、へーこいてもた。こめんやでちゅーのもありやと思うんやが、慎重に行きたいんやったら、そうするのもええやろ。そやけど、あんた、ファイティングポーズはいつまでも取り続けなあかんよ。断続的にはなるでしょうが、しばらくは頑張ります。