プチ小説「青春の光8」

「ああ、まだ帰宅されていなかったですね」
「もう今日の仕事は終わりだが、楽しい話だったら聞かしてもらうが」
「そうこなくちゃー。こういうのは思いついてすぐの方が...」
「ネタは新鮮な方がいいというところか。で、今日はどんなネタかね」
「今日は、「腰掛ける机の謎」というタイトルです」
「なんだか、タイトルを聞いただけで、心が躍る気がするなあ。聞こうじゃないか」
「では今日も、大阪弁の面白さを楽しんでいただきます。今日は先に標準語に近いものを
 聞いてもらってから即興的にいろんな装飾をしてしまう大阪弁の妙を聞いてもらいます。
 以下、予備校教師の独白(授業)です。
 『今日は、as soon as〜やon 〜ingなどの接続詞の勉強をしましょう。それでは、例によって、
  前の黒板で、練習問題の回答を書いてもらいましょう。』『だいたい、よくできていますね。でも、
  これはおかしいです「腰を掛けるとすぐに、机が地震で揺れ始めた」という文ですが、この場合に
  on 〜ingを使っていますね。この構文は主語が同じになるので、主語はどちらも机となります。
  因に省略しないで言うと、「机が腰掛けるとすぐに、机が地震で揺れ始めた」ということになりますので、
  正しくは、「わたし」や「わたしたち」を主語にして、as soon asを使って書いて下さい』
 (「今日はas soon asとかon 〜ingとかの接続詞を勉強しましょう。それではいつもやってもろてるように
   練習問題の回答を書いてや」「みんな、よお勉強しとるな。そやけど、これはおかしいでぇ。
   「腰を掛けるとすぐに、机が地震で揺れ始めた」やけど、on 〜ingを使うてる。「わたし」や「わたしたち」を
   主語にしてas soon asを使って英作文をせなあかん。これだと、「机や椅子がフー疲れたなと椅子に腰掛けたら、
   揺れ始めたんで、わー大変やと机や椅子が大騒ぎし出したというようなけったいな光景が思い浮かぶわ」...)」
「まぁ、70点というところかな。大阪弁は面白いが、どちらかというと標準語のような切れ味がないので、だらだらと
 続けると締まりのない会話になってしまう。前回のような歯切れの良い会話なら、リズム感も出て楽しい気持ちにさせるが
 今日のは説明的なところが多いので、大阪弁でやるより標準語でまとめた方が良かったのではないかな。多分、田中君は、
 「わー、大変やと言って机や椅子が大騒ぎした」というところが面白いと思ったのだろうが、「机が腰掛ける」という
 それだけでも、ぷっと吹き出させる力があるように思うよ」