プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 夏こそ天体観測の好機編」

わしが中学生の頃やったと思うんやが、先生が理科の時間に天体について面白い話をしてくれた。話の内容はほとんど覚えとらんが、いくつかの単語を覚えていて、それが後に天体観測をするためのキーワードになったと思っとる。まずは身近なところから言うと北斗七星とカシオペヤ座から北極星の位置がわかるちゅー話や。これを聞いてわしは冬の空で北斗七星を見つけては北極星を確認したもんやった。それから冬の空に見られる一番明るい恒星シリウス、マイナス1.5等星のこの星は金星には及ばへんが冬の空で一際目立つ存在ちゅーことや。冬で目立つ星座ちゅうたら、オリオン座やが、ベテルギウスという赤い恒星とリゲルという白い恒星があって、時にはベテルギウスがリゲルより明るくなるちゅー話を聞いて、なんでそうなるんかなと思うたりしたもんやった。それからオリオン座には馬の頭の形をした馬頭星雲ちゅーのがあって、300ミリくらいの望遠鏡があったら、その興味深い絵姿がおがめるちゅー話やった。その他、オリオン座の大星雲やプレアデス星団(すばる)も興味深かった。他に夏の天の川や夏の大三角形、秋のアンドロメダ星雲の話を聞いたんやが、冬の星座ほど心に残らんかった。船場は、天の川を見るんやーちゅーて、奈良県にある星の国の宿泊予約を取りよったけど、天の川と夏の大三角形を見るためにそんな遠出をする価値があるんかなと思うんやが、どないなんか訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、にいさん、夏に天体観測する意味があるかということですね。そうやー、お前、天の川をみるだけやったら、奈良の山奥で一夜明かしたら住むことや。何も星の国に行かんでもええんとちゃうん。そら、にいさん、夜行性の動物にお尻をかまれたり、やぶ蚊にようけかまれたりするかもしれません。なんで冬に行かないのかちゅーことについては、雪や低温の心配という理由がありますが、それより冬の空は大気の揺らぎ(シンチレーション)の状態が不安定で天体観測に向かないと言われているからです。確かに「冬の星座」で歌われる、北斗七星、オリオン座、すばるは魅力がある星座ですが、観測する状況としては不十分なことが多いんです。空気の揺らぎが観測に影響するちゅーんかいな。そうです。私の知っている人の話では、200ミリの望遠鏡だとひどい場合には星が望遠鏡の視界から消えたり入ったりするということですから、これでは撮影も難しくなるんじゃないかと思うんです。一方、梅雨明けから秋にかけての空はシンチレーションも安定して観測しやすくなります。私も夏の星座、星団はよく知らないんですが、さっき、調べてみるとたくさんあることがわかりました。そうか、わしにも教えてくれ。これは星の国で60ミリの望遠鏡が借りられたらの話ですが、まず天の川の全体像を観測した後、夏の大三角形を見ます。次いで南に目をやりさそり座の赤い星アンタレスを探します。そのすぐそばに球状星団M4がありますから、じっくり見てみたいと思います。夏に見られる球状星団としてはたて座のM11やヘラクレス座のM13が有名ですから、そちらも頑張って見ようと思っています。いて座には、M8、M20、M23の星雲や星団、へび座にはM5、M12、M16の星雲、星団がありますのでそれぞれ1時間くらいかけて観測しようと考えています。これらは球状星団や散光星雲ばかりなので、途中、こと座の環状星雲M57やこぎつね座のあれい状星雲M27も見られたらと思います。そうか、そんなに調べとったら当日はたくさんの星団や星雲が見られるかもしれんなあ。私は今から20年程前に佐治天文台に行き、晴天で、新月で、ビクセンの60ミリの望遠鏡を借りられたのですが、星団、星雲をひとつも見ることができませんでした。ほう、それはなんでなんや。まったくの思いつきで行ったので、星団、星雲がどこにあるかわからなかったんです。下調べの大切さを実感したんでした。それと赤道儀がついてなかったので、数秒で視野から消えてしまって観測どころではなかったのです。今回はニコンの赤道儀付きの60ミリの望遠鏡が借りられるということですから、うまく使いこなせれば(赤道儀をうまく合わせられるか不安ですが)たくさんの星団と星雲が観測できると期待をしています。そうかほたらわしは8月3日がええ天気になるよう祈ったるわ。是非、よろしくお願いします。