プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 日頃の行いが悪いと天気に反映する編」
わしがちいこい頃、夏休みによう家族旅行をしたもんやったが、いつもええ天気やった。旅先で雨傘を差しながら両親と一緒に歩いたちゅー記憶はないし、旅の目的地で芝生にビニールの敷布を広げてみんなでお昼ご飯を食べた時も、雲一つない青空やった。3人の子供の学費を稼ぐために一所懸命、ちょっとだけゴルフをして、働いとった父親と子供の健康、服と食べ物のことだけしか考えへんかった母親を神さんが天国で見てはって、せめて天気くらいはあんたらのええようにしたるでぇと思うてくれはったんかもしれん。昔から梅雨が明けてから10日間はええ天気が続くちゅーて、この頃に登山をする人が多いんやが、今年は梅雨が明けても空は雲だらけで快晴の日はほとんどない。天気が良うないと視界が悪いから、写真の写りが良うない。またどんよりとした空は気分を滅入らせよるし、健康にもようない。ここ2、3日はようやく快晴に近い日が続いとるが、また台風が来るから、天気はどないなるかさっぱりわからん。船場は、梅雨明け10日やから大丈夫やろちゅーて、1か月前から宿を予約して奈良の山奥まで星を見に行きよったが、厚い雲に覆われて、天の川がほとんど見られんかったらしい。2人分の宿泊費を払いよったらしいし、電車とバスとを乗り継いで片道4時間くらいかかったちゅーのに報われんかったんやから、これは、日頃の行いが悪いからこうなったんじゃと言えるんとちゃうんやろか。あんた、どう思う。まあ、答えてくれるはずないわな。しゃーないから、船場に訊いたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、にいさん、天気が今一つだったのは、私が日頃から人のためになることをしてないからとおっしゃるんですね。そうやー、文句あるんやったら、ゆーてみなさい。そうですね、確かに私は自分勝手なことばかりしていますよね。人のためになるようなことはしていないし。会社に貢献することもないし、趣味でしていることが社会のためになるということもないし。これでは神様がよい天気をプレゼントしてくださるということもないですね。まあ、そう悲観するな。第一、全然、星が見えへんかったちゅーことやなかったんやろ。確かににいさんが言われるように、少しは星が見えました。45センチの望遠鏡で木星、土星を見ることはできました。天の川銀河も少しだけ雲間から見えました。午後8時30分頃のことです。ほたら、それでよかったんとちゃうん。いいえ、その後、午後11時までしばしば外に出て天を見遣りましたが、厚い雲に覆われていました。午前3時に起きて外に出ましたが、同じでした。ふーん、そら、天の川見に行ったちゅーのにおもろないわな。でも、星のソムリエのおじさんに天体写真の撮り方を1時間程教えてもらったので、行った甲斐はありました。ほう、そら良かったな。ところが、持って行ったカメラが両方ともバッテリー上がりになって、カメラの使い方についてはまったく聞けなかったのです。そら、あかんがな、ええとこなしやったな。いいえ、そうじゃなかったんです。どっちや、それどういうことやねん。おっちゃん、聞いたるから話してみぃ。実は8月8日と10日に花火大会の撮影に行ったのですが、教訓を生かしてバッテリー上がりになることもなく、無事撮影できたということです。趣味は気長に続けることが大切なんじゃないですか。この時に上手く行かなかったら、次があるさと考えることが大事なんではないですか。いろんな経験をして同行の先輩の話を聞くこともあり少しは上達しているんですから。それに続けていれば、きっと何かいいことありますから。船場、そら、あんたの言う通りやが、それは負け惜しみというやつとちゃうんか。そうですね、そうとも言えますね。