プチ小説「友人の下宿で17」

「みなさん、こんにちは。今日は高月さんが 、リヒャルト・シュトラウスの作品を
 紹介して下さるそうです。それでは、高月さん、張り切ってどうぞ」
「リヒャルト・シュトラウスはたくさんの管弦楽作品のみならず、「ばらの騎士」などの
 いくつかのすぐれたオペラも作曲しています。彼の旋律はモーツァルト、ベートーヴェンや
 他のロマン派の作曲家ほど心を打つものではないという評価もありますが、大規模な
 管弦楽を背景に浮かび上がって来る美しい旋律は魅力的なものであると思います。
 まずお聴きいただくのは、ホルン協奏曲第1番です。この曲の美しい旋律を聴いていると
 リヒャルト・シュトラウスはメロディーメーカーだったと思うのですが、いかがでしょうか。
 またこの曲はオーケストラのホルン奏者であった父親に捧げられた曲と言われています。
 デニス・ブレイン他の演奏でお聴き下さい」

「次は、曲は非常に有名ですが、最後まで聞いた人が余りいない曲をお聴きいただきます。
 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」です。映画で冒頭の1分足らずのところが使われ、
 余りに有名になったため、そのあとのところが余り聞かれないのですが、大規模な
 オーケストアが美しい旋律を奏でるところもあり、今日を機会に最後まで聞いていただければ
 と思います。メータ指揮ロサンゼルス・フィルの演奏でお聴き下さい」

「次は、交響詩「ドン・キホーテ」です。リヒャルト・シュトラウスは、音にできないものはないと
 言って、家庭交響曲のような音にすることが不可能そうなものや哲学的なモチーフを音にすることに
 果敢に挑戦したのですが、このスペインの文学作品も彼の想像力によってすばらしい音楽となっています。
 フルニエのチェロ、セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏でお聴き下さい」

「最後はやはりアルプス交響曲をお聴きいただきましょう。リヒャルト・シュトラウスは自然を愛し、
 アルプスにもしばしば足を運んだようです。その時の経験をもとにアルプス登山を管弦楽で表現したのだ
 と思います。私もヨーロッパアルプスは無理でも、日本の北アルプスくらいは行ってみたいと思っています。
 演奏は先程と同じくメータ指揮ロサンゼルス・フィルの演奏でお聴き下さい」

「百田、どうだった」
「あの映画は何度も見たことがあるけど、オルガンと金管楽器の響きが印象的な華やかだけれどすごく短い曲
 だと思っていた。高月さんは全曲聞いてほしいって言ってたけれど、ぼくには映画の場面とサウンドが頭に
 焼き付いている。それを払拭するのはむずかしいし、このままでもいいんじゃないかと思う。あまりに
 強烈な印象は、他の小さなことを吹き飛ばしてしまうみたいだね」
「......」