プチ小説「掬星台で夜景を掬う2」(超ビジュアル小説)

空田は前回のリベンジを期して掬星台を目指していた。と言っても市バスとケーブルカーとロープウェイを利用してだが。空田には大きな声で独り言を言うという悪い癖があった。
「この前は、三脚が携帯用で低く、柵が邪魔になって充分な撮影ができなかったけど、今日は中判カメラ用に昔買った三脚を用意した。来る途中で、中判カメラ用にネジアダプター(?)がつけられているのに気付いて慌ててカメラ屋さんで取り外してもらったが、そのまま来たら、夜景を写せずに帰ったかもしれない。危ないところだった。3段式でぼくの顔の高さまで雲台を上げることができるから高さは問題はない。安心して、撮影できるだろう。でも気になるのはケーブルカーとロープウェイの乗客の多さだな」
市バスを降りて乗車券販売の窓口に並んで見渡すと、前回の2倍くらいの人がケーブルカーの中にいて窓口の前には20人ほどの人がいた。アナウンスが流れ、午後7時50分星の駅(掬星台)発のロープウェイが最終であることを告げていた。
「今、午後6時20分だから、掬星台に着くのは40分過ぎかな。それから1時間程あるから、なんとかなるだろう。午後6時前には真っ暗になっていたから、1時間前に家を出たらよかったなぁ」
星の駅に着くと、再び最終が午後7時50分であることをアナウンスで繰り返していた。
「前回来た時に係員のおじさんに尋ねてみたけど、交通機関は他にないとのことだった。乗りそこなったら、ここで夜を明かさないといけないのかな。まあ午後7時45分までは撮影できるから、1時間くらいあるかな」
空田は2つある展望スペースの奥の方に行き、人が少ないのを確認して三脚とカメラを取り出して、まず西側のポートアイランドやモザイクガーデンを撮影してみようと言った。

 

「展望台の真ん中は人が多いから、今度は東側にスペースが取れたらそこから撮影しよう。大きな三脚はがっしりしていて微動だにしないから安心して撮影できるけど、スペースを取るからやりにくいなぁ。やっとスペースができたぞ。前は満月を一緒に写せたけど今日は西の空に三日月をちょっと過ぎた(月齢5)と言う感じだな。前より空が暗いから夜景が眩い気がする」

 

「よし、今度は元のところに戻って、超広角レンズや望遠レンズで撮ってみよう。まずは21mmで撮ってみよう。おや」
アナウンスが流れ、終電は7時50分だが、これに乗られないと下山ができないこと、本日は客が多いことを言っていた。
「45分に行けば最終に間に合うと思っていたが、人数制限ではじかれると残念でしたねということになるのかな」
空田は気になっていたが、超広角レンズや望遠レンズで何枚か写真を撮った。

 

空田が腕時計を見ると7時30分を過ぎていた。さあ、望遠レンズであちこち撮影しようと思っているとアナウンスが流れた。7時50分になったら、ロープウェイの入口のシャッターを閉めます。間に合わなければ、乗車できないと言っていた。
「それに7時50分になる前に乗客が多くなったら、ロープウェイのキャパは25人と言っていたし、超過したので歩いて帰ってください(まさか)と言われるかもしれない。早い目に乗り場に行っといた方がいいかもしれない。ばたばたして撮ってもいい写真が撮れないだろうし、今日はここまでにしよう。がっしりした三脚で撮影したから、フレームが歪になるけど、トリミングしてもいいのがあるかもしれない」

 

空田は三脚をバッグに収納し、カメラに望遠レンズを付けたまま鞄に放り込むと7時35分には列の最後尾に着いた。7時45分にはシャッターが半分下り、やはり切り捨てられる人が出るのか、ぼくはどうなんるんだろうと空田ははらはらしていたが、7時50分にアナウンスが流れ、7時50分までに乗り場に来た人は(時間を過ぎても増便し)ロープウェイ、ケーブルカーの利用は可能ですと言ったので、空田はほっと胸を撫で下ろした。