プチ小説「年始はやはり神社巡りから」(超ビジュアル小説)

空田は友人の福井から、大晦日の午後10時過ぎに自宅を出て年が明けてから京都の神社を巡るという話を聞いて、一度自分も行ってみたいと思っていた。今度の年末年始は8連休ということもあり、思い切って行ってみることにした。午前零時30分に北野天満宮に付いたが、なかなかお賽銭箱までたどり着けなかった。空田には大きな声で独り言を言うという悪い癖があった。
「もうすぐ午前1時になるけれど、まだ北野天満宮のお参りが済んでいない。30分前に列の最後尾についたのに、結構時間がかかるんだな。合格祈願の高校生が一番多いかな。後は大卒後数年以内の同窓会みたいなグループも多いようだな。大学卒業後の消息を教えあっているからわかるんだ。後はアベックかな。ふーっ、ようやく賽銭箱まであと1メートルだ」

次に空田は上賀茂神社を目指して、今出川通を40分東へ、堀川通を1時間北へと歩いたが、上賀茂神社の鳥居までたどり着いて、時計のライトを照らして文字盤を見ると午前2時50分だった。
「なぜ神社の入り口なのに照明をつけないのかな。......。なるほどそうか、ここから社務所があるところまで明かりがなくて芝生が広がっているから、星空がほぼ180度見える。オリオン座や北斗七星が真っ暗な空を背景に浮き上がって見える。なんだか明かりがない時代に逆戻りしたみたいだな。こういう静かな暗いところにいて、星空を眺めるのもたまにはいいのかもしれない」

空田は上賀茂神社を出ると賀茂川べりをしばらく歩き、北山通りを東に入った。ノートルダム女学院の手前で右手に折れ、下鴨本通りに入った。
「福井さんは、ここでいつも道に迷うと言っていたなあ。洛北高校を通過して、北大路通りを渡るとどこで左に入ったらいいかわからなくなる。いつも手前で左に曲がり、道に迷うと言っていた。でもはやる気持ちを抑えているとやがて下鴨神社参道という表示が見えてくるんだ。ほら」

空田は、下鴨神社のお参りを済ませると楼門をくぐった。しばらく歩いて振り返るとライトに照らされて楼門が浮かび上がっていた。



「ここもいいけど、もう少し先に行くと暖を取ることができるようだ。あそこまで行ってみよう。寒い日には心地いいんだろうな」



「ここは暖かくていいな。そうだここでも一枚撮っておこう。なかなかいい感じだな。ストロボを使わずにISO1600の高感度撮影だとうまく撮れる。小型カメラ(カシオEXILIM)なのに優れもんだな。もう1枚写しておこう」



空田は、平安神宮で平安守を買ってから門を出て、振り返ってもう一度応天門を見たが、写真は撮らなかった。また八坂神社の西楼門も撮らなかった。
「好き嫌いを言ったら、バチが当たるかもしれないけど、やはりぼくは下鴨神社の楼門が好きだな。しんと静かな杜の中に堂々と建っていて。しかも誰に対しても温かなもてなしをしているようだ。他の神社を経由して下鴨神社にまた来たいから、来年も大晦日の夜から元日の未明は京都に行くだろうな」