プチ小説「たこちゃんのライカ」

ぼくは今から20年程前に、ライカM6をズミクロン35ミリというレンズと一緒に購入した。出来上がった写真も美しく、使い勝手も良かったので、ライカの虜になり、ズミクロン50ミリ、沈胴式エルマー50ミリ(赤エルマー)、沈胴式エルマー90ミリ、エルマリート21ミリと交換レンズも順次購入した。そして昨年の夏には、自動露出のM9を購入した。M9は露出を決めて、シャッタースピードをAに合わせれば、あとはピントを合わせるだけだから、夜間の撮影に重宝している。たとえ30秒以上の露出が必要でも、正確に露出時間を測定してくれるのだから。M9の特性を利用して、花火や夜景の写真を撮ったが、これからも夜間の面白い写真をどんどんどしどし撮っていきたいと思っている。最近、M6を使うことがほとんどなくなったので、何とかならないかと思っているが、一旦M6で撮るとなるとフィルムの購入が必要となり、DPEでフィルム現像、同時プリント(ファイル化してCDRに焼き付け)をしないとホームページで使ったり、画像を加工することができない。M9で撮影するとすぐに画像データとなるので、とても便利なんだ。そういうわけで、1本残っているフィルムを使わないともったいないなぁと思っていたところ、ライカMマウント変換アダプターが出ていて、ニコン、オリンパス、ソニーなどのカメラ用のがあるということを知ったんだ。オリンパスOMマウントレンズ用というのも、3,000円ほどで売っていたので、スペック(本当に使用可能なのか)も知らずに購入してしまった(実際のところは、ライカM6、M9などでオリンパスのレンズが使えるというアダプターでした)で。ぼくの持っているオリンパスOM1もOMマウントだから、多分、大丈夫だと思うんだけど、OM1は一眼レフ、ライカのレンズはレンジファインダー用のレンズだから、何か支障があるかもしれない。でももしこのアダプターでOMマウントのオリンパスのカメラが使えるなら、大きな虹の架け橋ができるわけで、オリンパスのデジタルカメラでライカのレンズが使えるようになるのかもしれない。高校生の頃から写真撮影をしているので、ピントを合わせるのは問題ないが、露出時間を決めるのはなかなか難しい。M9があるので、それで十分とも言えるが、オリンパスの超小型でOMマウントの安価な中古デジタルカメラとライカレンズとの架け橋ができれば、カバンに手軽にオリンパスの中古デジタルカメラを入れて、高画質の撮影が可能になるのかもしれない。
駅前で客待ちをしているスキンヘッドのタクシー運転手は以前、中古のデジカメで家族旅行の写真を撮ると言っていたが、最近家族旅行へ行ったりするんだろうか。そこにいるから訊いてみよう。「こんにちは」「オウ ブエノスディアス エン エル ヴィアッヘ ウン コンパニェロ イ エン ラ ヴィダ シンパティーア」「そうですね、ぼくと鼻田さんとは一緒に旅をしているのかもしれませんね」「まっ、なんて、船場さんて文学的で芸術的なんでしょ」「そんな、お世辞を言っても何も出ませんよ」「そうか、底意が見えとったか」「・・・・・・」「ところでまたあんた新しいカメラを買うんかいな」「いいえ、今持っている、オリンパスOM1とライカのレンズを繋げるためのアダプターで、3,000円ちょっとのもんですよ」「そんなこと言うて、ほんとのところは、オリンパスのOMマウントのデジカメと繋げるちゅーてたやんか」「ははは、バレましたか」「あんたM9の使い勝手がええと言いながら、舌の根もかわかんうちに、オリンパスのデジカメに乗り換えるんかいな」「まあ、それを言われると辛いんですが、ぼくが高校1年生から使っているオリンパスOM1とライカのMシリーズ用のレンズが一緒に使えたらいいなというところから始まって、オリンパスの安価でライカM9より小型のOMマウントの中古デジカメがあったら、いつもカバンに入れて持ち歩きたいなと思っているんです」「あかん、あかん、それよりあんたにとっては、3月4日に無事に『こんにちは、ディケンズ先生』第3巻と第4巻が出版されることが大切やろ。それが無事出版されるためには、うさぎ跳びとリアカーごっこは必須なんやでぇぇぇえ」と鼻田さんが目を剥いて鼻孔を膨らませて言ったので、ぼくはびびってうさぎ跳びを始めた鼻田さんに続いたのだった。