プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 懐かしい本屋がまたひとつ編」

わしがちいこい時、母親が本屋でパート勤務しとったから、その本屋によう行ったもんやった。その本屋では文庫本、雑誌、趣味の本や漫画本はもちろん、文学全集やレコードも扱っとった。当時は全部の本をビニールでくるんでへんかったから、文庫本や単行本だけでなく、漫画本も立ち読みし放題やった。そんなんやったから小遣いをぎょうさんもろてへんかったわしは、母親が働く本屋でよう立ち読みをしたもんやった。漫画本では水島新司(敬称略)の「男どアホウ甲子園」が好きでようそこで購入したんやった。ある時、何巻やったか手に入らんかったんで、それを手に入れるためにはどうしたらええか考えたんやが、もしかしたら大阪駅前の大きな本屋に行ったら手に入るかもしれんと思うて出掛けたんやった。その成果があったかどうかは忘れてしもうたが、それ以降は大阪の2つの旭屋書店に行くようになった。今から40年ほど前は大阪駅西口の南側はスラム街のようになっていて、バラックの2階建てやったか3階建てやったかの旭屋書店がそこにあった。わしは、曽根崎の旭屋書店の方よりこっちの方によう行った。ヒルトンホテルが建つちゅーて、それから5年ほどしたら、そこはすっかり様変わりしてもうたんやが、当時のその旭屋書店の床が板で、踏んだらミシミシちゅーとったんをよう覚えとる。大学に入ってから、本は大学生協の本屋で買うたんやが、たまに河原町(わしは京都の大学に行っとった)の三省堂に行った。大きい本屋のええところは、文庫本や新書の品数が豊富で、文学全集がようけ置いとるところなんやが、三省堂で1、2時間潰すこともようあった。今は大阪の本屋ちゅーたら、阪急梅田駅前の紀伊国屋書店ちゅーことになっとるんやが、わしが熱い気持ちを持って通うとった書店ちゅーたら、2つの旭屋書店やった。船場は最近、ライカM9ボディとオリンパスOMシリーズ用の接写レンズ(ズイコーレンズ)とがアダプター(K&F社製)で引っ付くちゅーて喜んどった。そやけど距離計が使えんので、カメラを適当な位置に持って行ってシャッターを押さんといかんから、何枚も同じ被写体を撮らんとあかんちゅーとった。あいつあほやから、またバッテリーがちょびっとしか残ってへんのに京都府立植物園に行って、タンポポの種の写真をピンボケも合わせて20枚ほど撮った(そこでバッテリーが切れたみたいや)ちゅーとったが、ちゃんとタンポポの種撮れたんやろか。いっぺん訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、タンポポの種がちゃんと撮れたかということですね。ええ、20枚の中に2枚だけシャープな写真がありました。えっ、シャープのエアコンの話なんかしてへんぞ。にいさん、しょーもないボケはせんとってください。わたしはもちろんバッテリーがあがるまで写真を撮るために京都の植物園に行ったんですが、もうひとつ目的があったんです。ほう、それはなんや。それは、ジュンク堂京都店が今月末で、閉店になるからです。1988年の開店からよく利用したものでした。なぜか私の著書も本棚に並べてくださっていて、2月15日に行ったら『こんにちは、ディケンズ先生2』改訂版が並べられていました。そうそう、わたしは3階の文庫本売り場によく行きました。ちくま文庫のディケンズの本がないかとよく訪ねたもんでした。きっとジュンク堂京都店と言われるとそこの情景が思い浮かぶことでしょう。そうやなわしもどこかの本屋を訪ねて、床がミシミシなったら大阪駅西口近くにあった旭屋書店の思い出すかもしれんなぁ。
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