プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 心に沁みるシャンソン編」
わしは1970年代前半、フツーの大阪の中学生やったんで、土、日は毎週飽きもせんと吉本新喜劇や関西テレビ、読売テレビのバラエティ番組を見とった。岡八郎や船場太郎のギャグを真似して、ひとりで悦に入る日々やった。そんなある日、わしは読売テレビのバラエティ番組でフランス人の歌手ダニエル・ビダルを見たんやった。「夢見るシャンソン人形」「オー・シャンゼリゼ」「パリのお嬢さん」(もしかしたら、違ってるかもしれん)なんかを日本語で流暢に歌うのを見て、外人も日本語で歌うんやと思うたもんやった。当時母親がダニエル・ビダルの影響を受けてか、フランス人形を購入して、狭い部屋の中で燦然と輝いとったのを覚えとる(今も実家の片隅に置かれてあるんやが)。中学生の頃には、ミッシェル・ポルナレフのファンやったが、「愛の休日」「シェリーに口づけ」「忘れじのグローリア」くらいしかええ曲がなかったのは残念やった。フレンチ・ポップスと言うよりわしはムード・ミュージックのカテゴリーに入れている、ポール・モーリア、レイモン・ルフェーブル、フランク・プールセルの各楽団は中学生や高校生の頃によう聴いた。ちゅーても2000円以上もするLPレコードは高値の花で、ポールモーリアのベスト・アルバムを購入したくらいやったから、専らフレンチ・ポップスを聞くのはラジオでやった。浪人時代から大学生の頃に、イヴ・モンタンの「枯葉」を聞いて、シャンソンをじっくり聞いてみたろという気になった。ほんで中古レコードを買うたんやが、その中に入ってる、「パリ祭」「パリの空の下」「バラ色の人生」「愛の讃歌」「ロマンス」「私の心はヴァイオリン」「パリの屋根の下」「ドミノ」「パリのお嬢さん」なんかを聞いて、パリに滞在して、エッフェル塔や凱旋門のあたりをうろうろしてパリジェンヌを目に焼き付けたいと思ったもんやった。わしは主に英語で歌われたポップスを聞くもんやから、シャンソンを聴くのはたまにということになる。それでもこの前、「Chanson
BEST 40」という2枚組CDを購入して聴いとるんやが、シャルル・トレネの「ラ・メール」・ジュリエット・グレコの「パリの屋根の下」や若い頃にイヴ・モンタンが録音した「枯葉」なんかが入っていて、うっとり聴き入ってしもうた。船場は、シャンソンのベストアルバムを購入しても知らん曲ばっかりやと嘆いとった。それでもポール・モーリアやフランク・プールセルのシャンソン選集を購入して、曲目を一所懸命に覚えとるらしい。フレンチ・ポップスにも最近は興味を持っとるちゅーとったが、どないしとるんか、訊いてみたろ。おーい、船場ーっ。おるかー。はいはい、フレンチ・ポップスやシャンソンのことですね。私は最近フランス映画にも興味を持っていて、たまたま「男性、女性」という映画を観たんです。内容は今一つでしたが、ヒロインのシャンタル・ゴヤが可愛くて彼女のベスト・アルバムを購入してしまいました。シャンタル・ゴヤって、ガールズ・ポップスとかロリータ・ポップスとかいうカテゴリーに入っとる歌手やろ。ええ、そうです。でも、「乙女の涙」「やさしくネ」「笑って、泣いて」なんかとてもいい感じですよ。それからフランソワーズ・アルディのベスト・アルバムも買ってみたのですが、こちらは「さよならを教えて」くらいしか知ってる曲がなかったので少しがっかりしました。私としては、ジャクリーヌ・フランソワやパターシュやジュリエット・グレコなんか1950年代から60年代に人気があったシャンソン歌手のベスト・アルバムを収集したいのですが、なかなか安価で入手することは難しいようです。わしは断然、シャルル・トレネやな。ラ・メール、めっちゃええんとちゃうん。ええ、その通りですね。