プチ小説「クラリネットを友にして」

感染症が蔓延していて予防のため1か月間クラリネットのレッスンが中断していたが、1時間前に電話が入り、4月7日からレッスンを再開するとのことだった。Fはほっとした。
<中断の期間が長かったから、どうなるかと思ったよ。いくつか楽しみというか、いや生き甲斐というようなものがあるけれど、クラリネットは別格だ。ディケンズの小説やクラシック音楽や写真と同様にこれからもずっと楽しみを与えてくれることだろう。
50才まではクラリネットをレコードやCDで聴くだけだったが、50才になって少しでも魅力的な音色が自分で出せたらとマイ楽器を購入してレッスンに通うようになったんだった。指導されている先生は厳しいところもあるけれど、ぼくの無理な希望もよく聞いてくれて、発表会ではぼくが希望した曲を取り上げてくださる。最初に希望したのは習い始めて7年経過してからの、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレだったけど、6人で演奏するよう段取りをしてくださった。そのあとも、「エーゲ海の真珠」「君はわが心のすべて」(レハール「ほほえみの国」から)「Take Five」を発表会で演奏できるように取り計らってくださった。レッスンは受ける人のニーズを満たしているかどうかが、続けられるかどうかのポイントだと思う。ある程度クラリネットが吹けるようになると発表会で演奏することが楽しみになってくるが、演奏する曲目が、とても吹けないような難しい曲や演奏したくない曲や余りにやさしい曲だとぼくの場合は力が入らなくなってしまう。共演する生徒さんの了解を取っていただいて、ぼくが希望する曲を発表会で演奏できるようにしてくださっている。なので今の先生のレッスンが受けられる限りはずっと続けたいと思っている。
ぼくは自分のホームページを持っていて、そこに自分の演奏をUPすることができるので、発表会の演奏だけでなく、ディケンズ・フェロウシップの会員の方や一人で演奏したものもUPしている。先生が、クラリネット演奏の楽譜にシャープを2つつけて2度(1音)上げれば伴奏をそのまま使えるということで、「君はわが心のすべて」はfinaleというソフトを使って楽譜を作ったが、これからもそんなことができたらなあと思う。そんなクラリネットの演奏の楽しみ方を教えてくださったのも先生なんだ。
先生はピアノ伴奏だけでなく、いろんな楽器の方と共演してライヴを開催されるが、ご自宅のある奈良の近辺で開催されるので行きそびれてしまう。一番残念だったのは、ピアノ伴奏でモーツァルトのクラリネット協奏曲を演奏された時で、自分が開催しているLPレコードコンサートと重なってしまった。是非もう一度その機会があることを願っている。先生のクラリネットの音色は澄んで明快だけれど、暖かく和ませてくれる音でもある。いろんなジャンルの曲を演奏されるが、モーツァルトのクラリネット協奏曲のピアノ伴奏版とブラームスのクラリネット・ソナタ2曲を演奏される演奏会をされたら、是非行きたいと思うけど願いは叶うんだろうか。
これからもレッスンを受けて少しでも上達したいが、レッスンは年間を通して2つの時期に分けられる。発表会前4ヶ月間とそれ以外の時なんだが、発表会前に発表会で演奏する曲を仕上げるのも意義があることだが、それ以外の時に音階や練習曲やアーティキュレーションを習うこともためになる。先生はジャズの演奏に役立つと言われて、ソルフェージュをされるが、楽典や音感の素養がまったくないぼくにとっては時間の無駄になるように思うので、テキストを使って練習曲やコードを教示してほしい気がする。
これからも発表会の演奏をホームページにUPすることを楽しみにしたいが、ピアノ伴奏や独奏でもどんどんどしどしUPしたい。そのためにはレッスンを続けることが第一だけれど、息切れしたり、指が動かなくなったりすることがないようにしっかり運動して、不摂生なことを控えるようにしたい。
歌うことや縦笛、トランペットでできなかったことが、クラリネットではできている。クラリネットでの演奏は100パーセント満足できるものではないが、平均して60パーセントの満足を得られるものであるなら、これからもずっと続けていきたい>