プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 「七人の侍」もええけど「生きる」もええよ編
わしが中学生の頃、母親が本屋に勤めていたんで、子供のためにといろいろ興味深いレコードを買うて来てくれたもんやった。その中にジーンズ版世界の映画音楽(*´з`)のがあって、ブラザース・フォアの「遥かなるアラモ」やフランキー・レインの「OK牧場の決闘」なんかをよう聴いたもんやった。聴いているうちに西部劇に興味を持って、テレビの映画番組で「シェーン」「荒野の七人」なんかを見たもんやった。わしの好みは、「アラモ」「西部開拓史」「駅馬車」のような歴史物やのうて、正義が悪に拳銃で挑む(*´з`)アクション映画のカテゴリーに入るもんやった。そやから、「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「荒野の七人」「荒野の一ドル銀貨」は何度見ても面白く、放映されるのが楽しみやった。淀川長治さんが言うとったのか、荻昌弘さんが言うとったのか忘れたけど、「荒野の用心棒」は黒沢映画の「用心棒」をマカロニウエスタンにアレンジしたもの、「荒野の七人」は黒沢映画の「七人の侍」をジョン・スタージェス監督が翻案して製作したものということがわかった。それでそれからすぐに「七人の侍」が放映されたんで見たんやが、「荒野の七人」やマカロニウエスタンが総天然色、つまりカラーのことなんやが、に対し、「七人の侍」は白黒映画で音声も聞き取りにくかった。ほいでストーリーに集中でけんで、ようわからんかった。そやけどある日、「椿三十郎」を見てやっぱり黒沢映画は凄いな思うて、これはじっくり見なあかんと思うて、「用心棒」と「七人の侍」を見たもんやった。社会人になる前のことで、今やったらもっと作品を理解できると思うんで、いつか「用心棒」と「七人の侍」のDVDを買うてみよかなと思うんやが、最近、船場は「生きる」を見て、大粒の涙を流しとったみたいやけど、どんなシーンで涙を流したんか、聴いてみたろ。おーい、船場ーっ。おるかーっ。はいはい、にいさん、「生きる」どのシーンが良かったかということですね。ちょっと、待って、わしに当てさせてくれ。どうぞ、言ってみてください。でも、最後のところで、主人公渡辺(志村喬)がブランコに乗って「ゴンドラの唄」を歌うところとか、市役所の同僚が回想するシーンで主人公が夕焼けに感動していたことを話すところとかいうのは駄目ですよ。ううーっ、それやった。わしの負けや。そんなにすぐに負けんとって下さい。ところでどのシーンかというのは、ちょっと置いといて、兄さんは、キャッチライトという撮影技巧をご存じですか。いや、わしは繁華街で強引に客引きをするやつしか知らん。それはキャッチセールスですね。キャッチライトというのは、瞳の中に明かりを入れてその人物に命を入れる(命が入ったように見せる)ということです。志村喬が同じ職場に入職してすぐに転職した若い女性から、物を作るって楽しいことよと言われて、瞳の中にライトがともるあのシーンがとても泣けるシーンで...。そう言えば、船場はこれと言った実人生で実績を残しとらんから、身に染みたんやろな。ほっといてください。そやけど黒沢映画というのは、ええのがようさんあるなあ。そうですね、私は以前から志村喬さんのあの力強いけど優しいまなざしが気になっていたんですが、今回、「生きる」をじっくり見て、本当に志村喬さんって素晴らしい俳優だなと思いました。それで、余りに古い(1943年)ので、二の足を踏んでいたのですが、黒沢明監督の最初の作品「姿三四郎」を見てみようかなと思いました。わしは、「酔いどれ天使」や「野良犬」も観てみたいなぁ。いや、それより、兄さん、「七人の侍」の中古DVDを買いましょう。そうや、それが先やな、そうしましょ、そうしましょ。