プチ小説「ジャズはえ~よ」
新型コロナウイルスの蔓延で、ライヴハウスでのライヴやコンサートホールでの演奏会が中止になっているだけでなく、貸スタジオの利用もできなくなっている。めっちゃ下手だったけど発表会でテイク・ファイヴを演奏して、これからもジャズ・スタンダードをクラリネットで吹いてみたい。STUDIO
YOUでたっぷり練習するぞと思っていた矢先にこんな状況になるなんてと思わず文句を言いたくなるが、そもそもぼくがジャズに興味を持ったのは、何が切っ掛けだったんだろう。ぼくは浪人時代からずっとクラシック音楽ばかりを聴いて30才になったが、一通り聞きたいレコードも聞いたし、以前から聴いてみたかったジャズを聴いてみようと思いついた。ぼくはある意味ガイドブック・マニアと言えるので、早速、自宅近くの高槻市立小寺池図書館を訪れた。音楽書の棚のところに日本たばこが発行した、「名演 Jazz
Standards」「名演 JAZZ PIANO」「名演 Modern Jazz」という本があり、最初に「名演 Jazz Standards」を借りた。この本が、枯葉をはじめいろんな曲を紹介するだけでなく、それぞれの曲が入っている名盤(例えば、枯葉なら、キャノンボール・アダレイの「サムシング・エルス」)を紹介していた。物欲の塊で、コレクター魂に火がついたぼくは早速、梅田の堂山にあったディスクJJ(今はここにディスクユニオン大阪支店がある)を訪ねた。ここはクラシックとジャズの両方の中古レコードが置かれてあり、いつものノリで店に入ることができた。その時に何を買ったのかは覚えていない。もっとわかりやすいガイドブックがないかと思ったようで、その帰り道に曽根崎にあった旭屋書店で寺島靖国氏の「辛口JAZZノート」と「JAZZリクエスト・ノート」を購入した。この2冊の本の影響力は大きく、一時はクラシック音楽をほとんど聴かなくなり、週末にジャズの名盤を安価で購入するために大阪や神戸に出掛けるようになった。日本たばこの3冊のガイドブックはジャズに興味を持たせてくれたということで、有難い本だったが、寺島氏が書かれた2冊の本は、スタンダードの名曲、ミュージシャン、名盤について掘り下げて興味を持たせてくれる好著でそれから数年間はこの2つの本に掲載されているLPレコード(アルバム)の収集に明け暮れた。興味を持ったアーティストは、ビル・エバンス、ジョン・コルトレーン、チェット・ベイカー、スタン・ゲッツ、アート・ペッパー、ズート・シムス、リー・モーガン、ポール・デズモンド、ブッカー・リトル、アート・テイタム、ベン・ウエブスター、トミー・フラナガン、アート・ファーマー、ジム・ホール、マイルス・デイヴィス、ソニー・ロリンズ、アート・ブレイキー、ハンク・モブレー、ジャッキー・マクリーン、ケニー・ドーハム、クリフォード・ブラウン、アルバート・アイラー、ソニー・クラーク、レイ・ブライアント、ジェリー・マリガン、デクスター・ゴードン、ピート・ラ・ロカ、ソニー・クリス、ドナルド・バード、ケニー・ドリュー、ガトー・バルビエリ、J.R.モンテローズ、ミルト・ジャクソン、フランク・ロソリーノ、カーティス・フラー、ビック・ディッケンソン、バド・シャンク、ハンプトン・ホース、ジョージ・アダムス、マル・ウォルドロン、ジミー・レイニー、ケニー・バレル、レッド・ミッチェル、ポール・チェンバース、レイ・ブラウン、ルロイ・ビネガーなどで、もちろんジャズボーカルも魅力的なシンガーをたくさん教えてもらった。クラシックと同様に良い音で聴きたいといくつかのジャズ喫茶を訪れた。一関のベイシーで、ケニー・ドーハムの「静かなるケニー」のA面を掛けてもらったり、寺島氏の経営するメグでマイルス・デイヴィスの「フォア・アンド・モア」のA面を掛けてもらったりしたが、何度も通ったのは阪急茨木市駅近くにあったコルというジャズ喫茶で、多分1990年代の中頃に2、30回は訪ねたと思う。他によく行ったのは、京都河原町通りにあった、ブルーノートで、ここは夜はジャズバーでライヴもやっていたが、お昼は喫茶店でリクエストに応えていた。1997年から東京阿佐ヶ谷の名曲喫茶ヴィオロンに通うようになってクラシックばかり聴くようになり、ジャズは余り聴かなくなったが、ある時メグに行ってみたくなり、今から5年ほど前の土曜日に訪れたが、入店することができなかった。ライヴがあるので、それ以外のお客さんは入られませんとのことだった。はじめてメグを訪れた時には寺島氏が店内の後ろの方で流れる音楽を聴いておられたが、今はどうされているのだろうか。その後も何冊か寺島氏の本を購入したが、最初に買った2冊は今でも大切なよりどころである。そうだ30年前に購入しなかった日本たばこのガイドブックの古本を通販で購入しよう。