プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 見果てぬ夢編」
わしがちいこい頃は漫才の全盛時代で、その中でもわしは、人生幸朗・生恵幸子の漫才が大好きやった。内容は歌謡曲の歌詞の内容について幸朗が文句を言うて、幸子がしょうもないことを言いなという内容で、井上陽水の「東へ西へ」の歌詞に文句を言うとった記憶がある。ほんまあほなこと言うてみんなで笑いを共有するっちゅーえー時代やったんやなーとレトロで観てそう思うんや。ほんまあの頃はよかった。それからわしも苦労して大学に入ったんやが、前からスペインのセルバンテスの『ドン・キホーテ』ちゅう喜劇ともユーモア小説ともいえる小説をわからんながらも最後まで読んだんやった。漫才なんかのお笑いが好きなわしは、何かおもろそうやちゅー本は大学の時にしか読めん、特に『ドン・キホーテ』みたいな大作はなおのことやと思うて、読んだんや。あんまり理解はでけへんかったけど、主人公のドン・キホーテがなんでかたまに、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャちゅーのか、あんたわかるか、わからんやろ、教えたるから、鼻の孔掃除しながら聞けよ、ちゃうちゃう、耳の穴掃除してから聞けよ。デ・ラ・マンチャちゅーのはラ・マンチャ(マンチャ村)出身のドン・キホーテちゅーことなんや。そやから、1972年公開の映画、「ラ・マンチャの男」ちゅーのはラ・マンチャ出身のドン・キホーテの話ちゅーことや。内容は、騎士道文学を読みすぎて、脳みそがぱさぱさになって、おかしくなったドン・キホーテがお供のサンチョ・パンサを連れて、スペイン国内を水戸黄門になった気分で(これはわしが考えたんやが)漫遊する。そうやサンチョゆうたら、幸朗がドン・キホーテで、突っ込みをいれるサンチョは幸子みたいやなと漫才見るたびに思うたもんやった。風車や鏡の騎士と戦ったり、ドゥルシネーア・デル・トボーソに片思いをしたりして物語は盛り上がるんやが、最後は故郷に帰って隠居する。そういった内容やったと思うんやが、あんまり自信がない。生活そのものが、ドン・キホーテみたいな船場やったら、もっと詳しいことを知っとるかもしれん。いっぺん訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、にいさん、昼寝をすると夜眠れないのは当たり前やのんとちゃうちゅーことですね。そら幸朗はんのネタやがな。わしが訊きたいのは、ドン・キホーテのことや。そうでしたね、なにせ『ドン・キホーテ』というのは、17世紀前半に出版された小説ですから、19世紀以降の文学と違って、おおらかなところがあります。ですんでドン・キホーテやサンチョ・パンサの性格をもとにして後世の人が、いろいろ創作したものの方が、とっつきやすいと思います。それはなんや。ひとつは、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲「ドン・キホーテ」です。音で『ドン・キホーテ』を描いています。もうひとつは、1972年の映画「ラ・マンチャの男」です。1965年のミュージカル「ラ・マンチャの男」が作られた時から、「見果てぬ夢」(ジ・インポッシブル・ドリーム)というすばらしい曲がテーマ曲として歌われていて、フランク・シナトラやアンディ・ウィリアムスもレコーディングしています。映画自体は最初の三分の二まであんまり面白くなかったのですが、ピーター・オトゥールがこの曲を歌い始めると目頭が熱くなって...。映画って、いいもんですねという感じになりました。わたしは下手ながら、スローテンポの曲なら楽譜があれば吹けますので、スタジオでゆっくりクラリネットが吹けるようになったら吹こうと思って、昨日、ササヤ書店に楽譜を買いに行ってきました。そうか腰が重い船場をそんだけ刺激する曲やったら、相当ええ曲なんやろうな。そうです。今となってはどうしようもないのですが、松本幸四郎さんがラ・マンチャの男を演じていた時に松本さんの歌声で「見果てぬ夢」を聞けたら良かったのになぁと思うのですが、後の祭りという感じです。まあ映像は残っとるやろから、DVDで出ることを待っとったらええんとちゃう。そうですよね。5千円くらいで買えるなら、ぼくも購入して、御利益をいただいて「見果てぬ夢」を現実のものにできたらなあと思います。まあ、船場の願いは地道にやっとったら、かなうんとちゃう。それやったらええんですけど。 (敬称は略しました)