プチ小説「たこちゃんの旅行」
トラベル ヴィアヘ ライゼといのは旅行のことだけど、新型コロナウイルスの蔓延で、3月以降は遠方へ出掛けることができなくなっている。他府県への移動も自粛を求められているので、ちょっと気晴らしに京都に行きたいなと思っても行けないし、京都市内で受けているクラリネットのレッスンも3、4、5月は受けていない。徐々に制限緩和になっているけど、曙光が射す日がやってくるんだろうか。もともとぼくはじっとしているのは嫌いで、休日にカメラ片手に京都や大阪に出掛けて休日を楽しく過ごして来た。『こんにちは、ディケンズ先生』を出版してからは、自著をいくつか携帯して関東や中部地区を中心に全国の図書館に出掛けた。年に1回は北海道か東北か九州の図書館に出掛けて受け入れをお願いしたりした。3月4日に3巻と4巻が出たので、そんなことをこれからどんどんどしどしやろうと思っていたところ、突然感染症が蔓延しまったくできなくなってしまった。あんまりやーと言ってもどうにもならないので、仕方なくレコードやCDを聴いたり、DVDを見たりして休みの日を過ごしているが、もっと充実した休日が過ごせるよう願っている。どこにでも行けるようになったら、まずは関西のいくつかの図書館に行ってみたい。そう、京都市立とか奈良の図書館とか。それから鶴舞の名古屋市立図書館に行ったついでにみそカツを食べたり、千葉市、さいたま市も東京のLPレコードコンサートの時に足を延ばしてみたい。そう言えば、今月もLPレコードコンサートを自粛するから、2回休みとなってしまう。67才までに100回開催するぞーと思っていたが、できるんだろうか。幻冬舎ルネッサンス新社の担当者の人と出版の話をしたり、挿絵を描いて下さった小澤一雄先生とお会いすることはできるんだろうか。小澤先生は毎年5月に展覧会を開催されていて、毎年行っていたが、昨月は行けなかった。ベートーヴェン250年の年にちなんでいろいろなことを考えておられるようなので、ベートーヴェンの音楽のファンの私としては、高円寺で開催される予定だった展覧会に行きたかったのだが、規制があり断念した。感染症が拡大しないように細心の注意はしているので、今のところ新型コロナウイルスは小康状態だが、また広まる恐れがある。かといってこのまま自粛をつづければ、いろんな活動ができない。3月に東京に行きたいと思ったが、周りの反対もあって見送った。こういうことがあったから、今後も危ないことはできないだろう。昨日、テレビを見ていると楽器演奏は、弦楽器は問題ないが、吹奏楽や合唱は問題があると言っていた。そうなるとクラリネットは駄目ということになり、ワクチンや特効薬が出来ない間はレッスンできないということになるんだろうか。そういうことを考えているととても憂鬱になってきた。駅前で客待ちをしているスキンヘッドのタクシー運転手はいつも楽しそうにしているが、こんな混迷の状況をどのように見ているのだろうか。そこにいるから訊いてみよう。「こんにちは」「オウ ブエノスディアス ラ デスグラシア アセ マドゥラール ア ラス ペルソナス」「不幸が成長させるんですか」「そうや、船場はんは、長い浪人時代があってその時にいろんなことを考えてやってみたことが今に生きとるんとちゃう」「そう言えば...」「クラシック音楽鑑賞、西洋文学を読むこと、京都市内の散歩これは船場はんが浪人時代に始めて今なお続けていることや。どれもお金がかからんし、人格形成にはもってこいのもんや。お金ができたりすると、服を買うたり、旅行に行ったり、豪華な食事が食べたくなったりして人格形成に全く関係のないただの楽しみに向かうもんなんや。船場はんは管理職でなく再雇用やから、仕事にうち込む必要はないやろうけど、人格形成は生涯を通じて向上心を持って続けなあかんことやとわしは思うんや」「そ、そうですか。いつもスポーツ紙を読んでいる方からそんな話が聞けるとは思いませんでした」「何ゆーとんの大阪のおっちゃんは耳学問ちゅーのがあって、いろんな偉い人から有難い話を聞くことがあるんやでー。ラジオなんかでええ話しとる」「そうなんですね。なるほど、鼻田さんのおっしゃるとおりだと思います。で、それの実践ということになりますが、それはどうすればいいんですか」「そらもちろん基礎体力をつけるためには、うさぎとびとリヤカーごっこがええちゅーことになるわな」「そうですね。応用の話を期待するのは失礼ですよね」