プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 叙情派フォーク編」

わしが小学校3年生の頃やったと思うんやが、担任の先生がクラスで「バラが咲いた」を歌いましょうと言うて、みんなで一所懸命歌詞を覚えたちゅー記憶がある。とにかく生徒に歌を歌わせるのが好きな男の先生やった。それがわしのフォーク初体験やったわけやが、いっちゃん初めの好印象、つまりわしは「バラが咲いた」ってなんちゅーええ曲なんやと思うた、ちゅーのは尾を引くもんで、中学になってロックかフォークどっちか選ぶことになった時、わしは迷わずフォークを選んだんやった。簡単に言うとエレキギターにするか、フォークギターにするかちゅーことやけど、当時はエレキギターで甘い音を出したり、音色を変えられると思っとらんかって、ただ歯切れのよい大音量ということしか頭に浮かばんかったから、やっぱりフォークギターで演奏する、繊細なフォークソングがええわちゅーことになったんやった。最初はかぐや姫を聴いていたんやが、解散してからは、風をよく聴くようになった。チューリップも好きやったが、やっぱりかぐや姫と風やった。高校生になって、関西フォークにも興味を持って、高石ともやとナターシャセブンのレコードを買ったり、コンサートに出掛けたりした。そやけどナターシャセブンは1976年10月から深夜放送に出んようなってしもたし、風も1975年の6月にファーストアルバムを出してから、1976年1月に「時は流れて」、1976年11月に「WINDLESS BLUE」となかなかアルバムが出んかった。そうこうしとるうちに、紙ふうせん、ダ・カーポ、イルカなんかの歌の上手い女性ボーカルが出て来て、わしはそっちの方に気持ちが行ってもうた。船場は最近感染症が蔓延していて、休日外出でけへんから、CDをいっぱい買うたみたいや。太田裕美のCDをまとめ買いしたと思うたら、最近はイルカのベストアルバムや「植物誌」を買うたみたいや。八神純子のベストアルバムや渡辺真知子の迷い道やカモメが飛んだ日のシングルも買うたちゅーてたから、あいつ最近クラシック音楽を聴いとらんのとちゃうか。いっぺん聴いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、ぼくもにいさんと同じでかぐや姫や風のレコードはよう聴きます。懐かしい気持ち、高校生の頃の何も知らないけど夢が一杯あったあの頃の気持ちに戻してくれるからです。だからその頃の気持ちを呼び起こすためにぼくはナターシャセブンや風のレコードを聴きますが、最近は女性ボーカルを聴くことの方が多いです。八神純子や渡辺真知子のレコードか。にいさんも気づいてはると思いますが、一人のあるいは一つのグループのアルバムが何枚もヒットするというのはあまりないことです。たいがい1枚だけで、多くても3枚くらいです。ぼくが好きなのは、ジャズ・ボーカルではヘレン・メリルとアニタ・オデイですが、どちらもよく聴くのは1枚だけです(「ヘレン・メリル・ウイズ・ストリングス」「ディス・イズ・アニタ」)。カーペンターズは素晴らしいですが、こちらは名曲ぞろいのベスト・アルバムを聴きたいところです。アン・バートンの「ブルー・バートン」と「バラード・アンド・バートン」はいずれも大好きなアルバムです。シャンソンではジュリエット・グレコ、カンツォーネではジリオラ・チンクエッティをじっくり聴いてみたいと思っています。じっくり聴いてみたいちゅーて、お前、まだ聴いてへんねやろ。そうですね、ジリオラ・チンクエッティはまだ「雨」しか聴いたことがないんです。ほやけど船場はフォークに夢中になって、高校の時に勉強に集中でけんかったちゅー苦い経験があるから、今までみたいにクラシック音楽を聴いてた方がええと思うんやが。にいさんのおっしゃるとおりですね。あんまり手を広げるのはよくないですよね。ここらあたりでやめて、クラシックをBGMにして小説を書いたりすることにします。(敬称略)