プチ小説「ビリー・ヴォーンはえ~よ」
新型コロナウイルスの蔓延で、外出の自粛が求められている。現状では、休日は家で音楽でも聴いてゆっくりしてというのが要請されている感じなので、猛暑日も続いていることだし、ここは昔のことを思い出しながら、いにしえのポップスに耳を傾けるのことにしよう。ぼくが中学生だった頃はNHKラジオをつければ、しばしば外国の美しい音楽を聴くことが出来た。朝日放送の深夜番組ヤング・リクエスト、近畿放送(KBS京都)のゴーゴー電話リクエスト、ラジオ関西の電話リクエストで海外の流行ポップスの他、それ以前の1970年代前半、1960年代の幅広いジャンルの洋楽を聴くことが出来た。そんなある日曜日の夕方、NHKFMにダイヤルを合わせるとビリー・ボーン楽団演奏の「真珠貝の歌」が流れて来た。この曲の演奏、タイトルを知ったのは大分経ってからだったし、「真珠貝の歌」がハワイアン・ソング(ハワイ民謡)であることを知ったのはもっと後だった。ただ夏の浜辺をさすらう気持ちにさせてくれる心地よいサウンドに、心身ともにのめり込んでいくという感じがしたのを今でも覚えている。音楽って、すごいなあと思った瞬間だった。ビリー・ヴォーンの曲は概ね演奏時間が短く、「真珠貝の歌」の他には、「波時はるかに」「夕陽に赤い帆」くらいしか知らなかった。2、3年前に Melodey
Of Love という2枚組のCDを購入したが、ほとんど聴かないでいた(お目当ての「真珠貝の歌」が入っていなくて、がったりしたのを覚えている)。久しぶりに棚から取り出して聴いてみたが、ビリー・ヴォーンの誠実な人柄が感じられるすばらしいアルバムなので、今日は3時間ほど掛けて、これを最後まで聴いてみようかと思う。思えば、ムード・ミュージックというカテゴリーに入る音楽をたくさん聴いてきた。どちらかというとジャズのバンド演奏のような雰囲気があるアメリカの楽団、ビリー・ヴォーン、パーシー・フェイス、ヘンリー・マンシーニなどより、弦楽合奏が心地よい、ポール・モーリア、レイモン・ルフェーブル、フランク・プールセル、マントヴァーニなどのフランスやイタリアの楽団に傾倒して行った。パーシー・フェイスは、「夏の日の恋」は何べん聴いてもいいが、同曲のディスコ・アレンジ(「夏の日の恋’76」 と言っても、面白いなと思っているんだが)や「燃えよドラゴン」の編曲(これは、ブルース・リーの絶叫(ファンの方、すみません)が、キーボードの軽いアドリブのようなものに変えられている)のはいただけない。一方ポール・モーリアは「恋はみずいろ」「蒼いノクターン」「エーゲ海の真珠」「涙のトッカータ」「オリーブの首飾り」などコンスタントにヒット曲を提供し続けた。またレイモン・ルフェーブルはポップ・クラシカル(「涙のカノン」もいいが、「四季の冬」がもっといい)の名演奏を数多く残している。フランク・プールセルは「アドロ」につきるが、ぼくはしばしば、このドーナツ盤(シングル盤)をアナログプレーヤーに掛けて、陶酔して聴いている。マントヴァーニは、好きなプレミアム盤が2つあって、それをしばしば聴く。「Plays
The IMMORTAL CLASSICS」というのと「Gems Forever...」というもので、ここではマントヴァーニ楽団のすばらしい弦楽合奏が聴ける。多分、アメリカの楽団の演奏が好きになったら、今以上にジャズを聴き込んでいただろうが、ポール・モーリアやレイモン・ルフェーブルやマントヴァーニにのめり込んでいったので、クラシックに新しい出会いを求め、40年来のクラシック・ファンになったのだろう。それでも幅広くイージーリスニングを聴く切っ掛けになったのは、「真珠貝の歌」を聴いたからだと思うので、いにしえを懐かしんで、久しぶりに
YOU TUBEで聴いてみようかなと思う。寛げるのは確実だし。