プチ小説「ホルスト好きの方に(仮題)」

福沢は、ディスクユニオン吉祥寺店で、中古レコード漁りをしていた。同店ではジャズとクラシックのレコードを取り扱っていたが、福沢はいつものようにクラシックのコーナーでお宝を探していた。
<今までも、このくらいの大きさの店でプレミアム盤を見つけたことはある。...ストコフスキーのホルスト「惑星」か。セラフィムシリーズだから...そう1,500円だな。ストコフスキーがロサンジェルス・フィルを指揮しているのも珍しい。でもこのレコードは懐かしいな。だって僕が一番最初に手にした外国盤なんだから。僕がクラシックのレコードを買い始めたのは昭和53年で、その頃は堂島のワルツ堂と阪急32番街のDAIGAのふたつが大きなレコード屋だった。この2つの店は日本の会社の新譜(中古レコードでないもの)だけを取り扱っていた。阪神百貨店の中に少しだけレコードを置いている店があって、ここにはほんの少しだけ、外国盤が置かれてあった。その中にこのレコードがあった。中央から少し左上にホルストの肖像画(イラスト)があり、両端に占星術記号(惑星)(左側に上から火星、金星、木星、土星、右側に上から水星、天王星、海王星)が描かれている。そして中央のところには、宇宙から見た地球のイラストが描かれてある。何気なく手に取ったレコードに手の込んだ芸術性のあるイラストが描かれてあったので、僕は値段も手ごろなこと(当時の日本盤は2500円~2800円した)もあって、すぐに購入した。そのレコードも1500円だったと思う。これが、僕が外国盤を購入するようになった初めだった。それから10年ほどして、レコードマップが発売されて、全国の中古レコード店が紹介された。堂山のDISC JJ 神戸花隈のらるご 京都のラ・ヴォーチェ 大阪のストレイト・レコード、スマイル・レコーズ、名曲堂なんかに行ったものだった。最近は、予算が限られているので、3ヶ月に一度、新宿のディスクユニオンで1万5千円の中古レコードを購入するくらいになってしまった。最初の頃に訪れていた店のほとんどが後継者がいないなどの理由で店を閉めているのがとても残念だ。同じレコードを購入しても仕方ないから、ストコフスキー盤は元のところに戻しておこう。
ホルストの惑星の聴き始めは、冨田勲さんだけれど、オーケストラのレコードもたくさん聴いたな。カラヤン、ショルティ、メータ、プレヴィン、ボールト、オーマンディ、マリナー、どのレコードもジャケットの惑星(特に土星)のイラストに魅せられて、購入したというのが少しはある。そう言えば、僕が天体望遠鏡を購入したのも、一度は肉眼で土星を見たいと言うのがその理由だった。土星の克明な描写だと、本体に縞があるだけでなく、輪のほうにも縞はある。色も独特の色だし。部屋の飾りにA2くらいのイラスト画がないかしら、いやそれより模型なんかが売っていないかな。...この前にアマゾンで見たら、モビールや太陽系の模型があったな。いや、やっぱり土星のイラスト画がいいか。土星が大きく描かれているポスターがあったら、それにしよう。僕のように、ホルストの「惑星」に触発されて天体に興味を持ったという人がかなりいるんじゃないかな。土星のイラストを見て天体観測に興味を持ったのと同様に、ホルストの土星に魅せられて天体望遠鏡で土星を見たくなったとか...>


(続く)