プチ小説「座談会「ささやかな装置でよい音を」について考える」

「こんにちは、「青春の光」で橋本さんの相方をしている、田中です。船場さんから、本日は、「ささやかな装置でよい音を」についてみんなで意見を交わしてほしいとのことです」
「田中君、そう言ってもわれわれは船場君の分身なんだから、元は同じところから出ている」
「そら、あんたの言う通りや...けど、船場が頭に四方八方から圧力を掛けて、好物のチョコレートを食べながら絞り出したキャラクターなんやから、こうして大事に使ってもろうとる。そやから出してもらえた時は一所懸命頑張らんとあかんと思うよ。うんうん」
「そのうんうんちゅーのがようわからんわ」
「そら、鼻田はんとわしの話の識別がつきにくいちゅーんで、船場が考えたことや。そやからたまにこういう合いの手を入れることにしたんや」
「他にもあるのですか」
「そら、あんた、合いの手はア行で始まるんがええんやで、うんうん」
「どんなのがありますか」
「そら、あーんとか、いいーっとかやな」
「それは教育上好ましいとは言えないので、うんうんだけにしてください。ところで鼻田さん、今回は「ささやかな装置でよい音を」ということですが、船場さんはどんな装置でクラシック、ジャズなんかを鑑賞されているんでしょうか」
「何回もプチ小説で紹介されてるんで、またかと言われる読者の方もおられるかもしれんけど...プレーヤーはレコードプレーヤー2台とCDプレーヤーを2台持っていて、レコードプレーヤーは長年オルトフォンのSPUGクラシックという高級MCカートリッジをヤマハのGT‐2000というプレーヤーに繋いどったんやが、最近はオーディオテクニカのコストパフォーマンスがよいと言われるMMカートリッジに変えたみたいやな。それからCDプレーヤーは2年ほど前に中古で購入したマランツのCD6004を気に入って使っとるみたいや。それからアンプはラックスのL-570、スピーカーはオンキョーのMonitor2001を20年以上愛用しとるな。でも船場はんは最近、Macに外部スピーカーを繋いでCDを聴くことが多くなったみたいやで」
「そうですね。和室に前に使っていたMacに小型ステレオのスピーカーを繋いで炬燵台の上に置いてクラシックやジャズをよく聴かれるみたいです」
「でも、クラシックは大型スピーカーの方がええみたいやな」
「ええ、鼻田さんが言われるように和室ではもっぱらジャズを聴かれているようです。特にHQ、SA,、HMなどを冠したハイクオリティCDの音は抜きんでていると言われていました」
「うんうん、ちょっとここでHQ、SA、HMについて話たるから、おっちゃんの話聴いてな。HQというのハイクオリティちゅーことやからどちらでも使われるけど、クラシックの場合SA、ジャズの場合はHMという使い分けがあるみたいや。船場は再生装置は今までと同じやけどあんたが言うように、HQCDのお陰で音が格段に良くなったので十分満足しているちゅーとった」
「それでどんなのを聴いておられるんでしょう」
「船場君は最初、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」「アンダー・カレント」「エンパシー」のHQCDを購入して、その音の良さに感心したようだ。それでワンホーン(管楽器)が入ったものをいくつか購入した。ジョン・コルトレーンの「バラード」、ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」、スタン・ゲッツの「プレイズ」、ケニー・ドーハムの「静かなるケニー」、ブッカー・リトルの「ブッカー・リトル」、アート・ファーマーの「スエーデンに愛をこめて」なんかはとても素晴らしいと言っていた」
「他のピアノ・トリオやギターなんかはどうなんです」
「船場君は今から30年前にオスカー・ピーターソンの大阪ブルーノートでのライヴを見て、アドリブばかり演奏してメロディを弾かないピアニストや目立たないギタリストハーブ・エリスに好感が持てなかったのだが、HQCDで聴くと彼らの繊細な演奏が際立ち、今までも好きだったレイ・ブラウンとともにこれからじっくり聴いてみようという気になったようだ。それからギターでは、ジョニー・スミスの「ヴァ―モントの月」がそれこそとろけるようなギターの音が聴ける。普通のCDでは味わえない音だと言っていた」
「ポール・チェンバースは2つの「ベース・オン・トップ」を購入したようですね」
「それに「スエーデンに愛をこめて」やアニタ・オデイの「ジス・イズ・アニタ」なんかはオリジナルに近いレコードを持っているというのにわざわざHQCDを購入したようだ」
「もともと船場さんはピアノ・トリオがお好きのようなので、注文したソニー・クラーク・トリオの「ソニー・クラーク・トリオ」(ブルー・ノート)、レイ・ブライアント・トリオの「レイ・ブライアント・トリオ」が届くのを楽しみにしているようですよ」
「船場は、最近の演奏家のことをあんまり知らんようやから、今までに興味を持ったディスクをHQCDで聴きなおすちゅー感じやけど、昔のんでも新しいのでもええから、名盤の新発見に作業は続けてほしいな。うんうん」
「わしもそう思うでぇぇぇ」