プチ小説「座談会「おもろい映画」について考える」

「こんにちは、「青春の光」で橋本さんの相方をしている、田中です。船場さんから、今日は、「おもろい映画」について意見を交わしてほしいと言われました」
「田中君、それはジャンルは不問ということなのかな」
「そのようです。ご自分の体験と合わせて紹介していただけるとより面白いんじゃないか、と船場さんは言われていました」
「じゃあ、私から「おもろい映画」をひとつ。私が高校生の頃、「燃えよドラゴン」という映画がどえらいヒットして、カンフーブームとなったんだが、敵味方に分かれて争うというパターンが多かった。そういうワンパターンが出尽くしたところで、「おもろい映画」が作られた」
「そんなのがありましたか」
「「少林サッカー」のことさ。これは悪人をやりこめるというところはあるが、カンフーの技を駆使して勝とうとするというのではなくて、サッカーに勝つためにカンフーの技を使うといった感じで楽しめる。少しグロなところもないではないが、「おもろい映画」と言えるんではないかな」
「橋本はんは、ええこと言うけど、暴力もえげつないものでなければ、ええ刺激になるんとちゃうやろか。そんな「おもろい映画」がふたつある。うんうん」
「ぼくは、暴力はよくないと思うんですが、ええ刺激になる暴力ですか」
「そうふたつとも同じ監督なんやが、ウォルター・ヒルちゅー監督や」
「エディ・マーフィ主演の「48時間」とか、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「レッドブル」のことですか」
「いやいや、もっと暴力をウリにしている映画や。「ウォリアーズ」と「ストリート・オブ・ファイヤー」や。このふたつの作品は、確かに暴力シーンはあるが、過度ではなく抑制されている。映画を見た後は、勧善懲悪と清涼感が残る、悪い奴がやられてスカッとする映画や」
「なるほど。鼻田さんは何かありますか」
「わしは、好きな俳優がおって、その人が一所懸命頑張っとると刺激になるちゅーのがええかな。悲劇っぽいのもあるけど、ピーター・オトゥールが主演している映画が好きやね。「ラ・マンチャの男」「チップス先生さようなら」なんかを見ると少し悲しいところもあるけど、元気が出てきよる」
「ぼくはキャサリン・ヘプバーンの「旅情」が大好きなので、何べん見ても感動します。「おもろい映画」と言えると思います」
「その他、007もの、西部劇、アクションものなんかはどうですか」
「さっきの「ウォリアーズ」や「ストリート・オブ・ファイヤー」と違ごうて、やられたら拳銃で撃ち返し、殺人の連鎖が続くちゅー感じで、わしは好きになれん。うんうん」
「じゃー音楽劇はどうですか」
「「ウエストサイド物語」や「オズの魔法使い」「サウンド・オブ・ミュージック」のようなミュージカルと「グレン・ミラー物語」や「ベニー・グッドマン物語」の音楽劇とは区別せんといかんと思う。わしが音楽劇で好きなのは、「五つの銅貨」と「愛情物語」やな。ミュージカルやったら、「クリスマス・キャロル」やな。うんうん」
「わしは、ジェームズ・ステュワートという俳優も好きで、彼が出演する映画をたくさん見たんやが、なかでも「スミス都へ行く」「グレン・ミラー物語」「知りすぎていた男」「翼よ!あれが巴里の灯だ」なんかは何べん見てもええもんや」
「そうですよね。好感の持てる俳優が出演する映画なら「おもろい映画」やから何でも見るというのが、いにしえの映画でしたよね。好感の持てる俳優がたくさんいたから、映画ファンが多かった、それで映画が娯楽の王様だったと言えるんじゃないかな」」