プチ小説「レスピーギ好きの方に(仮題)完結編」

井上が、僕も古本を買おうかなと言ったので、2人は古本市をもう一往復することにした。井上が小川に話掛けた。
「さっき、レスピーギのローマ三部作の話が出たけれど、クラシック音楽には何とか三部作というのがたくさんあるんじゃないの」

「その通りさ、たくさんあるから、バッハから順番に検証してみようか」
「ちょっと大袈裟だけれど、やってみるか。最初はバッハからって言ったけど、バッハにそんなのあったかな」

「三大宗教曲というのがあるよ」
「マタイ受難曲、ヨハネ受難曲、ロ短調ミサ曲のことだね。どの曲も長大な曲だね」
「そう、マタイ受難曲は3時間以上、ヨハネ受難曲とロ短調ミサ曲は2時間近くかかる。宗教曲は概ね長いね」
「次は誰かな」

「その前に三大オラトリオの曲ってわかるかな」
「ヘンデルの「メサイア」とハイドンの「天地創造」はわかるけど、あと一つはわからない」
「メンデルスゾーンの「エリア」だけど、全曲盤はサヴァリッシュ盤くらいだから、知名度は低いと言える」
「それだと僕にはわからないね」

「じゃあ、今度はわかりやすいものを。有名なモーツァルトの三大交響曲はわかるかな」
「もちろん、後期三大交響曲とも言われる。第39番、第40番、第41番「ジュピター」だね。モーツァルトの最晩年を飾る大作と言えるね」
「モーツァルトの交響曲には都市名が付いているのも3つあるね」
「「パリ」(第31番)、「リンツ」(第36番)、「プラハ」(第38番)だね。でも聴くのは、「プラハ」くらいかな」

「僕もそうだね。ベートーヴェンはどうだろう」
「やっぱり、三大ピアノ・ソナタだろう。第8番「悲愴」、第14番「月光」、第23番「熱情」は最も有名なものじゃないのかな」
「ロマン派ではどうだろう」
「シューベルトの三大歌曲集「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」「白鳥の歌」と最晩年の3つのピアノ・ソナタは有名だね。シューベルトの遺作として、ピアノ・ソナタ第21番、歌曲集「白鳥の歌」、弦楽四重奏曲の3つがあげられている」
「シューマン、メンデルスゾーン、ブラームス、ショパンの三大何とかを考えて見たけど見当たらないね」

「国民学派のシベリウス、ドヴォルザーク、チャイコフスキーではどうだろう」
「シベリウスにはないけど、ドヴォルザークとチャイコフスキーは最後の3つの交響曲が三大交響曲と言える。チャイコフスキーは、三大バレエ音楽「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠りの森の美女」がある」
「三大バレエ音楽と言えば、ストラヴィンスキー「春の祭典」「火の鳥」「ペトルーシュカ」があるね」
「まあまあ、そんなに慌てないで、順番から言うとロマン派のオペラでは何があるかだよ」

「そうだね。じゃあ、ヴェルディの三大歌劇は、「椿姫」「トロヴァトーレ」「リゴレット」かな」
「ヴェルディの場合、人気の高い、完成度の高い歌劇がたくさんあるから、その3つだけというのは気の毒な気がする。三大歌劇というのだったら、プッチーニの「トスカ」「ボエーム」「蝶々夫人」だろう。ワーグナーの三大楽劇は、という質問と同じで回答不可能というところだね」

「他にないかな」
「あえて残しておいたんだけど、モーツァルトの三大歌劇というのがある」
「「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」だね」
「それじゃあ、この中でテキストがドイツ語なのはどーれだ」
「「魔笛」で、ジングシュピールオペラと言われているね。「フィガロの結婚」と「ドン・ジョヴァンニ」はイタリア語で書かれていて、オペラ・ブッファで喜劇のカテゴリーに入れられる」
「「ドン・ジョヴァンニ」が喜劇というのは受け入れがたいが、そうなんだね。話に夢中になっていたら、本を見てられなかった。また今度来た時に買うことにするよ」
「じゃあ、また一緒に来ようか」
「いいよ」