プチ小説「ブルッフ好きの方に(仮題)完結編」

今日は天気がいいから賀茂川べりを四条まで歩こうと小川が言ったので、ふたりは加茂大橋のところで川べりにおりて東側の遊歩道を南に歩き始めた。しばらく歩くと、井上は小川に話し掛けた。
「七大とかもいいけど、ブルッフには「スコットランド幻想曲」というのがあるから、クラシックのご当地ソングというのはどうだい」
「例えば、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」もご当地ソングというわけだ」
「まあ、端的に言えば、地名が入っているクラシック音楽の作曲家の曲ということになるかな」

「バッハのブランデンブルク協奏曲のブランデンブルクは地名だね」
「そう、地名だけど、メンデルスゾーンの「スコットランド」のように風景を描写した音楽ではないね。でも情景を描いた曲だけというと数が少なくなるから、標題に地名がついたものとしよう」

「ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」というのがあるね」
「モーツァルトも交響曲第31番「パリ」、第36番「リンツ」、第38番「プラハ」というのがある。ロマン派では何があるかな」

「まず思い浮かぶのは。シューマンの交響曲第3番「ライン」かな。それからメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」だな。リストはピアノ曲「巡礼の年」を作曲していて、第一年が「スイス」、第二年が「イタリア」、第三年が「ヴェネツィアとナポリ」だね。国民学派はどうかな」

「チャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」、交響曲第3番「ポーランド」、ドヴォルザークの交響曲第8番「イギリス」、スメタナの交響詩集「わが祖国」から「モルダウ」、イッポリート・イワーノフの「コーカサスの風景」も入れていいかな」
「それじゃあ、ディーリアスの「アパラチア」「パリ」も入れてほしいな」

「レスピーギの「ローマの松」「ローマの祭り」「ローマの噴水」はどうかな」
「そうなるとラロの「スペイン交響曲」も入れなくっちゃ。でもこれは、ブルッフの「スコットランド幻想曲」がオーケーなんだから、いいか」

「ファリャの「スペインの夜の庭」とサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」も是非入れてほしい」
「じゃあ、後はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」とピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲」を入れて終わるとしよう」