ベートーヴェン●弦楽四重奏曲第9番ハ長調作品59ー3「ラズモフスキー第3番」
第2楽章のピチカートや終楽章のフーガが印象に残る、中期弦楽四重奏曲の傑作と言われている作品。全体的に聞
き易い旋律で、様々なアンサンブルの粋を結晶させたベートーヴェンらしい力強さを感じさせる作品である。しか
し、聴いた後で、どこか首を傾げたくなるのは私だけだろうか。ベートーヴェンの魅力がぎっしりつまった作品だ
と思うが、余韻を感じさせるところや熱情を昇華させるところがないため、物足りなく思う。心の栄養にならない
ものをたくさん摂取したというのが、この曲を聴いたときに感じることである。少し厳しいことを書いたが、スメ
タナ四重奏団のCDを買ってはじめて聴いた時から、評価はあまり変わっていない。とは言え、この曲には弦楽四
重奏曲の魅力があふれている。アンサンブルも多彩だし、ピチカートも快く響く。現在、スメタナ四重奏団のCD
とブタペスト四重奏団、ウィーン・アルバン・ベルク四重奏団のレコードを聴いているが、少し物足りない。まだ
聴いたことのない、ブッシュ四重奏団やバリリ四重奏団は、なじみやすい音楽にしているのだろうか。でも、第1
楽章冒頭のあの旋律は、はしゃぎすぎていて、好きになれないだろうなあ。