ベートーヴェン●弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品74「ハープ」
 
美しい旋律にあふれ、各楽章に趣向を凝らし、心を強く揺さぶる苦悩からの脱出も後半に見ることができる、充実

した作品である。私は、最初、第1楽章のピチカートに引かれたが、のどかな雰囲気の第2楽章も、後半の苦悩と

そこからの開放にも引かれ、この曲の全てを楽しむようになった。弦楽四重奏曲に興味を持ち始めた頃にこの曲を

聴いて、室内楽を聴くことに、のめり込んでいったと言える。第1楽章中程から、弦楽器をピチカートで鳴らすと

ころがあり、ハープの音のようなので、「ハープ」という標題を持つが、私は、ここが一番の聴きどころだと今で

も思っている。好きな曲なので、愛聴盤も3枚ある。ウェラー弦楽四重奏団は、少しテンポが速く軽快で、ベート

ーヴェンらしさがないとも言えるが、耳に心地良く、一時、よく聴いた。バリリ四重奏団は、いつものように模範

となるような、きめ細やかな配慮の行き届いた演奏。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は、ゆったりとした

テンポで、この曲を心行くまでたんのうさせてくれる。特に、第2楽章の美しさは、比べるものがない。

 

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