ベートーヴェン●ピアノ三重奏曲第7番作品97「大公」
ピアノ三重奏曲の最高傑作であり、ベートーヴェンの作品の中でも、最も優れた作品の一つである。美しい旋律に
あふれ、3つの楽器の特長を充分生かすことができるように、随所に聴かせどころがある。チェロが渋い旋律を奏
でたと思ったら、饒舌なヴァイオリンがそれに加わる。そして、ピアノのきらきらした音がからんでくる。そんな
感じで、全く異なる4つの楽章を飽きることなく聴かせてくれる。私は、特に、第3楽章が好きで、後半のところ
はいつも作業の手を止めて、じっと聴き入ってしまう。最初は、オイストラフ・トリオの演奏を聴いていたが、ヴ
ァイオリン中心の演奏に物足りなさを感じ、シェリング、フルニエ、ケンプのトリオの演奏を聴くようになった。
三者が対等にバランス良く、楽器を鳴らす、非常に叙情的な演奏である。今では、さらに独奏者の個性が強く出て
いる、ティボー、カザルス、コルトーのレコードを聴く。古い録音で現在所有のレコードもノイズが多いが、カザ
ルスの力強く温かいチェロの音色は快く響くし、コルトーの朴訥としたピアノはしばしばきらきらと輝くし、ティ
ボーのよどみのない演奏はこの名曲をうまくまとめ、その上、第三楽章では心地良く酔わせてくれる。