ベートーヴェン●チェロ・ソナタ第2番ト短調作品5ー2
チェロの貴公子と呼ばれた、フルニエは、カザルスとは全く違った解釈で、チェロの音楽を楽しませてくれる。一
言で言うなら、カザルスはダイナミックで感情を前面に押し出すが、フルニエは繊細で内省的である。バッハの無
伴奏チェロ・ソナタなどを聴くと、その傾向が顕著である。フルニエの得意とするところは、バッハ、ハイドン、
ベートーヴェン、ロマン派の音楽、国民楽派の音楽等、多岐に渡る。ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集は、グ
ルダ、ケンプとピアニストを変えて、2度録音している。私は、ケンプとの第1番・第2番のレコードしか持って
いないが、この第2番が本当にすばらしい。ベートーヴェンの音楽を知り尽くしたピアニスト、ケンプとの共演で
見せる、重厚で、厳格な演奏はフルニエらしさがないとも言えるが、それ以上に、2人の演奏家が、ベートーヴェ
ンの音楽を演奏する時の真摯な態度が感じられる。以前、仕事がうまく行かなくて、落ち込んでいた時に、このレ
コードを聴いて、気を取り直したことがある。2人の厳格だが、心のこもった温かい演奏は、まるで一音一音が心
に温かい励ましを与えてくれるようだった。