ブラームス●クラリネット五重奏曲ロ短調作品115
ブラームス、晩年(57才)の傑作で、枯淡の境地の極みといった感じの作品である。旋律は美しく、アンサンブ
ルも非常に巧みである。ただ、この曲に一貫してある、悲しみは受け付けない人が多くいるだろう。私は、この曲
を聴くといつも、シベリウスの悲しきワルツを思い出す。「クオレマ(死)」の劇音楽の一つで、死を悲しむ曲で
ある。ブラームスも、独身であったため、晩年はより孤独であったと想像する。親友が次々と他界し、ブラームス
自身も健康がすぐれない、それで悲しみがつのっていった。そんな時に、この曲が生まれたのではないだろうか。
ベートーヴェンやショパンに葬送の音楽があるが、このブラームスの音楽の方が、透明かつ静かであるために悲し
みがより大きい気がする。美しい音楽であるが、なかなか聴くことを決断できないのは、ブラームスの枯淡の境地
には自分は至っていない、だからこの曲を受け入れたくないという反発が、どこかにあるからだろう。とはいえ、
この曲の魅力に負け、しばしば聴いているのだが。愛聴盤は、ド=ペイエとメロス・アンサンブル員が共演したレ
コード。