ブラームス●ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調作品78「雨の歌」
 
終楽章に、ブラームスの同名歌曲の旋律が使われているため、「雨の歌」という標題がつく。私は、オイストラフ

とバウエルが演奏するこの曲の第1楽章に魅せられ、毎日のようにこの曲を聴いていた時期がある。その後、デ=

ヴィートとフィッシャーの共演したものを聴いていたが、やはり第1楽章の演奏がすばらしい、オイストラフ、バ

ウエル盤を再び聴くようになった。ヴァイオリンが奏でる旋律で、これ程甘くせつないものを私は知らない。「雨

の歌」という標題がついているように、全体がしっとりとして、様々なイメージを想起させる。第1楽章は、将来

を誓い合った女性との恋愛の描写。しかし、最後のところで順調に行っていたものが、突然の事故により水の泡に

なってしまう。第2楽章は、最愛の女性を自分の不注意で失い、悶々とした日々を過ごすが、彼はやがて心の傷も

癒え、彼女も再び彼のところに戻ってくる。第3楽章は、二人で雨の中、傘を差して歩いている。強い雨が一時的

に彼らを襲うが、それも通り過ぎ、やがて太陽が輝く。彼らは、明るく照らされた歩むべき道を離れることなく、

着実に歩いていく。こんな想像をたくましくする人は、私だけだろうか。

 

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