ブラームス●ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調作品100
 
ブラームスは、3曲のヴァイオリン・ソナタを残しているが、この曲はブラームス、53才の時の作品である。熟

練した職人の業を随所に見られる作品であるが、それ以上に、一貫してロマンティシズムにあふれ、旋律は青春の

甘酸っぱい思い出をよみがえらせる。20分位の短い曲であるが、針をこのレコードの上に置くとしばらくして、

全く恵まれなかった私の高校時代よみがえってくる。失恋の連続、成績は最低、でも、クラブ(写真部)や文化祭

は楽しかった。古い校舎の床には油が塗られ、そのにおいは今でも思い出すことができる。暗室の中の現像液や氷

酢酸のにおい。先生の似顔絵を描いて、しかられた時の級友の笑顔。真冬のプールに入り、水草がたくさんはえて

いるのに泳いでいた物理の先生。校舎の窓ガラスを握りこぶしで割ってしまった私。好きな女の子と2時間程、話

しながら歩くことができたが、最後にお友達でいましょうねと言われて、家に帰って号泣した誰かさん。そんなや

るせない思い出が多い、高校時代にタイムスリップさせてくれるのが、この曲である。愛聴盤は、オイストラフ、

リヒテルのライヴ盤。

 

                        戻 る