ブラームス●チェロ・ソナタ第1番ホ短調作品38 同第2番へ長調作品99
 
ブラームスは、2曲のチェロ・ソナタを残している。第1番は32才の頃、第2番は53才の頃の作品。第1番は、

ホ短調ということもあって、渋く、暗く沈んだ作品。第2番は第1番に比べ明るいが陰影のある作品である。共

に、ウェットで一時的に感情の高まりが見られるが、不完全に終わってしまう。ブラームスの魅力に満ちた作品な

のに、なぜか聴いた後はいつも欲求不満で一杯になる。旋律も美しいし、技術的にも難しい曲と聞くのに物足りな

くなるのはなぜだろう。思うに、演奏時間の短さと低音の重視ではないだろうか。チェロの音色は温かくて魅力が

あるが、低音で長く演奏されると少し気が滅入ってしまう。ゆったりと、ピアノのきらきら輝く音と共に聴きたい

ものである。3種類のレコードを持っていて、どれもよく聴く。シュタルケルとボギン、フルニエとバックハウス、

デュ=プレとバレンボイムであるが、やはりシュタルケル盤がすばらしい。フルニエ盤は、音の良い、外国盤が

手に入れば私自身の評価は高くなるだろうが、日本盤の音は今一つである。シュタルケルの実演を大阪で聴いたこ

とがある(バッハの無伴奏、ベートーヴェン、ブラームスの各第二番)が、端正な演奏と精悍な顔つきは心に残っ

ている。

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