シューベルト●ピアノ五重奏曲イ長調D667「ます」
私が最初に興味を持ったピアニストは、ブレンデルである。私がクラシック音楽を聴き始めた今から23年前、ブ
レンデルはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を全て録音し終えたところで、モーツァルトやロマン派の作品の
レコードも次々と録音している、人気ピアニストだった。ブレンデルを初めて聴いたのは、FM放送で、ライヴ録
音のシューベルト、さすらい人幻想曲であった。エア・チェックしたテープを何度も聴き、シューベルト自身も最
後まで引けなかったという(その番組の解説でそう言われていた)難曲を正確に演奏する、ブレンデルのテクニッ
クはすごいなと思った。それからしばらくして、この「ます」のレコードをFM放送で聴いた。名曲を手堅く演奏
しているという感じで、当時評価の高い演奏だったが、あまりに頻繁にFM放送で流されたので、他の曲を聴きた
い私には、あまり聴きたくないレコードになってしまった。それ以来、他の演奏での名演を探してきた。一時、マ
スの写真のジャケットが印象的なパンホッファーとウィーン八重奏団員のレコードをよく聴いたが、今は、スコダ
とウィーン・コンツェルトハウス四重奏団員他による演奏をよく聴く。ウィーン情緒豊かな演奏である。