シューベルト●弦楽四重奏曲第14番ニ短調D810「死と乙女」
 
シューベルトの同名歌曲の旋律が、第2楽章で使われているため、「死と乙女」と呼ばれる。この曲を聴き始めた

時からずっと、イタリア四重奏団の演奏を聴いているので、愛聴盤もこのレコードになる。詩(グラディウス作)

の内容は、死神に見入られた乙女が若い命を失ってしまうものだが、死神は今もいる。言葉巧みに女性を誘惑し、

その女性の全てを奪ってしまう輩のことである。こういった男性は、一時の享楽のためだけに女性を手に入れよう

とする。だから、熱い時期を過ぎてしまうと、その女性に興味を失う。残された女性は、その男性が全てだったの

で、死を選ぶ。今の女性はもっとたくましく、安易に人生を捨てることはないかもしれないが、大きな痛手になる

ことは間違いない。確かに、死神は架空のもので強いロマンティシズムを呼び起こすが、本当のところは、女性に

対し無器用だったシューベルトが、死神のような男たちを批判したかったのかもしれない。それはさておき、イタ

リア四重奏団の演奏はそんなシューベルトの入魂の一作を、心をこめて演奏している。ウィーン・コンツェルトハ

ウス四重奏団他いくつかのレコードを聴いたが、イタリア四重奏団の演奏より優れた演奏はない。

 

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