シューベルト●アルペジオーネ・ソナタイ短調D821
私がクラシック音楽を聴き始めてしばらくした頃、シャフランとゴットリープが共演したこの曲のレコードが、F
M放送で紹介され、エア・チェックしたテープを長い間聴いていた。7、8年前にやっと、神戸の灯(ともしび)
という中古レコード店でレコードを購入し、愛聴している。哀愁に満ちた旋律が絶え間なく流れ、うっとりして、
いつも手を止めて聴き入ってしまう。ピアノも伴奏楽器であるのに、チェロ(アルペジオーネという楽器で演奏さ
れることはほとんどない)と同等に美しい旋律を奏でる。ただ、この曲がすばらしいのは、シャフランが演奏する
からのようである。好きな曲なので、ロストロポーヴィチ、フルニエ、トルトゥリエ等の演奏を聴いたが、シャフ
ランの演奏の方が優れていた。シューベルトは、ロマン派の作曲家であるが、亡くなったのが、ベートーヴェン(
古典派)の死のたった一年後である。シューベルトの死後、シューマン、メンデルスゾーン等がロマン派の音楽を
作っていくが、シューベルトは年代的にはベートーヴェンと同時代と言える。そのため、大家である三人のチェリ
ストが、ベートーヴェンのチェロ・ソナタと同じ解釈で、引いているのではないだろうか。シャフランは、もっと
詩的で、叙情的で、哀愁に満ちている。