富士山に2回登る  


わたしことふくいえむは、3年連続して槍、穂高に登って来ましたが、今年はそれをあきらめました。その理由のひとつは梅雨明けが遅くなったこと。もうひとつは上高地へのアクセスで最適の電車の夜行急行「ちくま」がなくなったことからです。「ちくま」を利用すれば、翌朝午前6時頃に上高地入りすることができ、その日の午後4時頃までには槍ヶ岳山荘、南岳小屋、北穂高小屋、穂高岳山荘のいずれかに着くことができ、そこを起点に北に南に槍、穂高を縦走できるのでした。休暇は日曜祝日も入れて最高3日しか取れない、関西在住のわたしにとって「ちくま」はかけがえのない電車でした。「ちくま」がなくなったと聞いたのが今年の7月に入ってからで、それまではいつものように南岳小屋を起点に大キレット、北穂、涸沢岳、奥穂、前穂に行くことを予定にしていたのですが、計画を変更せざるを得なくなったのでした。最初、涸沢小屋を起点にして1回は北穂、大キレット、槍、もう1回は北穂、涸沢岳、奥穂、前穂と2回で縦走をする計画を立て、涸沢小屋に予約も入れました。しかしいつまでたっても梅雨は明けませんでした。7月22日から24日までと7月28日から30日までの2回の休暇を取ることにしていたわたしは梅雨明けが月末になっても難しいことを知り、「合わせ技」ができないのなら来年にしようと、今年は槍、穂高をあきらめたのでした。そのかわりとして、八ヶ岳と富士山が候補として上がりました。八ヶ岳は、視界が2、30メートルしかきかない中、赤岳に登った苦い経験があったので、天候が悪ければ、話題性もあるし富士山に登ろうと考えていました。28日に梅雨明けはしないと前々日に知り、富士山行きを決定しました。

富士山は30年前の子供の頃に、家族旅行で吉田口(富士登山には、富士宮口、吉田口、須走口、御殿場口の4つのルートがあります)の五合目に行ったことがありました。その時は河口湖経由でしたが、今回は新幹線で三島に行き、富士急のバスで富士宮口新五合目に行きました。宿泊の予約を入れた新五合目の小屋に到着したのが、午後1時40分でした。宿の方に何時頃還れば良いか聞くと午後6時30分までに戻ってほしいとのこと。時計を見ると午後2時前でした。財布、ガイドブック、飲み水、カメラを鞄につめ、行けるところまで行こうと頂上を目指して歩き出しました。

登りが5時間、下りが3時間のコースと言われていますが、わたしは登りを3時間、下りを1時間45分で行きました。その日八合目から山頂は風が強く、吹き飛ばされそうになったり、砂の粒が顔に当って痛かったのですが、無事頂上に着き、お札とお護りを浅間大社で購入し下山しました。晩ごはんの時刻に遅れたので、六合目の雲海荘から宿泊所に電話を入れました。

高山病は山の登り下りの際にはあまり気にならなかったのですが、就寝するために横になったところ、急に頭痛がひどくなりました。午後8時に横になりましたが、頭痛がひどく、3時間くらいしか睡眠できませんでした。

午前2時30分頃に同室の方がご来光を見るために出発すると外に出られたため、わたしも少し外に出ました。天を仰ぐとまさに満天の星空、午後8時頃に見た時は三日月があったので、見える星の数が少なかったのですが、未明には三日月も沈み空がより暗くなったため、銀河まではっきりと見えるようになりました。今まで見た中でもっともきれいな星空を飽かずにいつまでも眺めていました。

その後しばらく横になっていましたが、午前4時30分頃になると、同室の残りの方がもうすぐ日の出の時間と部屋を出て行かれました。わたしもそれに続いて部屋を出て、見晴らしの良いところに行きました。天気が良く空はほとんど快晴でした。下界に目をやるとうっすらヴェ−ルがかかっていて、しかも街の灯りがところどころに残っているなんともいえないうっとりする景色が広がっていました。

朝食後、すぐに山頂を目指しました。一日目は元祖七合目と八合目でスポーツドリンクとお茶を飲みましたが、それ以外にはほとんど休憩を取らずに登りました。二日目はリュックを背負っての登山だったため、九合目以降は頻繁に休憩を取りました。それでも4時間15分で頂上に着きました。

浅間大社に参拝後、郵便局で富士山登頂証や切手を購入したり、隣の土産物屋で土産を買ったりしました。登頂後は剣ヶ峰で記念撮影(北尾さんありがとうございました)をしたりしてお鉢巡りを楽しんでいましたが、途中雨が降出し、下山する頃(吉田口を下りました)には大雨になりました。しばらくして雨は小雨に変わりましたが、ガスであまり景色が見られず、オンタデばかりが生えているジグザグになった斜面をただひたすら2時間程下って行きました。やっと六合目に着きましたが、ここから五合目の長かったこと。この六合目から五合目への道で多くのツアーの方と行き違いました。あまりに多くの方がおられたので、小屋でゆっくりと休めるのか心配になりましたが、国際的な顔ぶれでにぎやかに通り過ぎて行きました。

吉田口は富士宮口と違って登山と下山のコースが違い、登山は小屋が多く賑やかとのことなので、また機会があれば吉田口から登ってみたいと思いました。吉田口五合目から午後4時発の新宿行きのバスに乗り、新宿西口に到着したのは午後6時20分でした。その後東京を登山スタイルでうろつき、最終の新幹線で帰阪しました。

富士山は、槍、穂高と違って危険なところがないので安心して登れる山だと思います。家族で楽しく登っておられるのもよく見ました。他方、高山病で大人や子供が苦しんでおられるのもよく見ました。トイレやゴミの問題がよく言われますが、ゴミは全くなく、トイレはきれいでした。わたしはご来光を見るために強行軍でなるべく上の小屋を目指すのもひとつの富士登山の方法だと思いますが、ご来光を見るという目的がなければ、五合目あたりで一泊して翌朝の早朝からゆっくりと登り夕方のバスで帰れるように下山するのが、よりよい富士登山の方法ではないのかなと思いました。

※  写真は1998年12月に撮影したものです。

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