ヴェルディ●歌劇「椿姫」
原題のラ・トラヴィアータは道に迷った女性という意味であるが、主人公のヴィオレッタは(人生を)楽しむのよ
楽しむのよと言って、享楽的な生活を送りつづけていた。しかし、ヴィオレッタはアルフレードという彼女を心底
愛し、彼女を立ち直らせたいと願う男性と出会う。ヴィオレッタは彼の気持ちをありがたいことだと感謝し、次第
に心を開いてゆく。二人はパリを離れ、二人だけの生活を始めるが、アルフレードの父親から、息子から離れてほ
しいと言われ、別れる。アルフレードが父親から事情を知らされるのは、ヴィオレッタが胸を患い余命幾許もなく
なってからである。彼はもう一度パリを離れてやり直そうと言うが、彼女は彼の胸に抱かれて事切れてしまう。こ
こで言う道に迷ったというのは、どのことであろうか。娼婦として生活していたことを指すのか、あるいはアルフ
レードへの愛を全てに優先させ、彼の父の制止もきかずにアルフレードを愛しつづけることができなかったことを
指すのか。そうではないと思う。多分、ヴェルディは、その場その場で合理的な判断ができない、愛すべき女性を
描きたかったのだと思う。愛聴盤は、カルロス・クライバー盤。コトルバスのヴィオレッタがすばらしい。