ワーグナー●歌劇「タンホイザー」
「タンホイザー」を知ったきっかけは、カザルスの演奏する「夕星の歌」を聴いてである。当時オペラの知識がな
かった私は、それが「タンホイザー」の中でウォルフラムが歌う、有名なレチタティーボとアリアであるというこ
とを知らず、少し暗い感じがするけど、希望を持たせてくれるような曲だなと思って聴いていた。それからしばら
くして、サヴァリッシュ指揮のライヴ盤を購入し、歌詞を見ていると、巡礼の旅に出たタンホイザーを追いかけ、
彼の無事を祈るエリザベートが大過なく旅ができるようにと、ウォルフラムが夕星に願い歌う歌だとわかった。タ
ンホイザーは序曲や行進曲が有名であるが、他に、タンホイザーとヴェヌスとの掛け合いの場面、旧友との再会の
場面、歌合戦の場面等、聴きどころがたくさんある。特に旧友との再会の場面は、感動的で第1幕の最後を飾るに
ふさわしい。タンホイザーが亡くなり、奇跡が起こるのは、死んだらおしまいだと考える私にとって不満が残るが、
深い感動を覚えることは間違いない。愛聴盤はサヴァリッシュ盤。ショルティの演奏をデッカのオリジナルに近
い音で聴いてみたい気もするが、序曲から熱いこの演奏の方が優れているように思う。