バッハ●マタイ受難曲
バッハは、教会で演奏される様々なオルガン曲の他、クリスマス・オラトリオ、ロ短調ミサ曲、ヨハネ受難曲やカ
ンタータのような宗教曲を作曲し、教会音楽に多大な貢献をしているが、その頂点にあるのがこの曲である。3時
間30分に及ぶ大曲であるため、一度に聴くことはあまりないが、各所にバッハの音楽の魅力がちりばめられ、時
にはげしく、時に優しく私を感動させてくれる。リヒターの旧盤がすばらしい。へフリガー、テッパー、フィツシ
ャー=ディースカウの独唱もすぐれているが、何よりすべてを統括するリヒターの手腕がすばらしく、バッハが隅
々まで心配りし丁寧に仕上げられた作品であることがよくわかる。この作品で好きなところは、独唱に弦楽合奏や
弦の独奏がからむところ。独唱者が歌うのは独白や心で思っていることで、弦楽器が奏でるのは心の動きであろう。
美しく、心をひきしめるような旋律を聴くと、信者でもないのに敬虔な気持ちになって手を合わせてしまう。今
後は内容も理解しながら(そのためにはもっと教養を深めなければならないが)、バッハの宗教曲を味わってゆき
たいと思う。