シューマン●歌曲集「女の愛と生涯」作品42
シューマンは、4つの交響曲やピアノ協奏曲のようなオーケストラの作品が有名であるが、ピアノや歌曲の作品に
も優れたものが多い。歌曲で言えば、この曲の他、「ミルテの花」、「詩人の恋」等の歌曲集に美しい曲が並んで
いる。この曲は、クララと結婚した頃の幸福な時の作品である。しかし、シューマンが曲をつけたこの詩は、ある
女性が男性と出会い、結婚し、死別するまでを描いたシャミッソーの詩である。普通なら、新婚時は妻を讃えたり、
やさしく愛を語ったりする音楽を作るのだが、このことから、シューマンは少し変だったのかなと思ってしまう。
ここは、ただ創作意欲を喚起させる詩がその時そこにあっただけと考えたい。愛聴盤は2つあって、ひとつはルー
トヴィヒがムーアの伴奏で歌ったもの。ルートヴィヒの表情豊かな歌唱は、曲をなじみ易いものにし、女性を身近
なものにしている。もうひとつは、レーマンがワルターのピアノで歌ったもの。レーマンの優しく歌う歌声は、
女性が喜ぶ時には本当によかったねと思わせ、女性が悲しむ時には、ずっと一緒にいてあげたいと思わせる。