ディケンズの長編小説の登場人物紹介   主人公の支援者編  

ディケンズの長編小説の登場人物の中には主人公の心の支えとなったり、物心両面での援助を与えたりする人物がいます。前者としては、ローズ・メイリー、メアリー・ラッジ、後者としては、チアリブル兄弟、ジョン・ジャーンダイスとなりますが、主人公が必ずしも良い人とは限らないので、マクチョーカムチャイルド夫妻が支援者ということも生じます。

ウォードル氏 『ピクウィック・クラブ』

ディングリー・デルに邸宅マナーハウスを構え、母、妹のレイチェル、ふたりの娘と一緒に暮らしている。主人公ピクウィック氏の一行が秋と冬にそこを訪れ、楽しい時間を過ごす。

ローズ・メイリー  『オリヴァー・トゥイスト』

主人公オリヴァーは窃盗団に無理矢理入れられ、メイリー家に家宅侵入させられて銃で撃たれ重傷を負う。ロズバーン医師のおもいやりで、主人公はメイリー家で手厚く看病されることになる。主人公はローズに弟のように可愛がられ、周りの人たちから親切にされる。ローズはローズ夫人の養女であるが、後に主人公の叔母にあたることが明かされ、メイリー夫人の息子ハリーと結ばれる。

チアリブル兄弟  『ニコラス・ニクルビー』

働き口が見つからず、困窮していた主人公ニコラスを雇う。チャールズとエドウィンの双子兄弟。誠実さと勤勉、そしてたゆまぬ努力で今の地位を築き上げた。陽気で楽天的、また慈愛に満ちた商人で、主人公一家の救世主となる。

ジャーリー夫人  『骨董屋』

「ジャーリーのろう人形館」の女主人。困窮しているヒロインネルを雇って、人形館の案内をさせる。

メアリー・ラッジ  『バーナビー・ラッジ』

主人公バーナビーの母。知的障害のある息子を大切に育てた。息子とふたりで平和に暮らしていたが、見知らぬ人物が金銭と食べ物を要求するようになったため、息子を連れて家を出る。

べヴァン氏  『マーティン・チャズルウィット』

心温かい医師。主人公マーティンとマークが騙されて、不毛の沼沢地エデンへの投資で金を使い果たしてしまうと、主人公からの求めに応じて金を送ってやり、母国へ帰る手助けをする。

ルクリーシア・トックス  『ドンビー父子』

チック夫人(ドンビーの姉)の親友で未婚の中年女性。密かに主人公ドンビーの再婚相手になることを願っていたが、それは果たされない。それを知ったチック夫人から交際を断たれるが、主人公が破滅した後にも、彼に対する気持ちは変わらない。

トマス・トラドルズ  『デイヴィッド・コパフィールド』

セイラム寄宿学校での主人公デイヴィッドの学友、明るく愛情深い正義派。弁護士になり、主人公がヒープの悪事を暴く際に、ミコーバーとともに助っ人となる。

ジョン・ジャーンダイス  『荒涼館』

荒涼館の持ち主。遺産をめぐる長年にわたる訴訟事件の当事者。ヒロインエスタの保護者。訴訟事件の関係者で彼のいとこにあたるエイダ・クレアとリチャード・カーストンを自分の家に引き取る。50〜60才だが、主人公を愛し求婚する。しかし主人公とウッドコートが愛し合っていることを知り、ふたりのために新しい荒涼館を建てて結婚させてやる。何かに失望すると、「東風が吹いて来た」と言って、部屋に引きこもってしまう。

マクチョーカムチャイルド夫妻  『ハード・タイムズ』

主人公トマス・グラッドグラインドが運営する学校の教師を共に務め、事実一辺倒の教育を実践する。

ダニエル・ドイス  『リトル・ドリット』

発明家。後に主人公アーサーと会社を共同経営することになる。主人公が債務者監獄に入ってしばらくして、ようやく会社が安定して、主人公も金銭的に困らなくなる。結果として、主人公がエイミーと結婚するための経済的支援をすることになる。

ジョン・バーサッド  『二都物語』

ソロモン・プロスのフランスでの仮名。イギリスでは政府のための密告者であったが、フランスに渡って、スパイになる。主人公カートンが獄中でダーニーと入れ替わったのは、バーサッドの手引きによる。

エイベル・マグウィッチ  『大いなる遺産』

主人公ピップが沼地で食物とやすりを与えた脱獄囚。再び捕えられて、オーストラリアに流刑になる。オーストラリアで事業が成功し、もうけた金を主人公に「紳士になるための教育費」として贈る。立派になった主人公に会おうとして死を覚悟で帰国するが、コンペイソンが警察に密告したため逮捕される。

ヘンリエッタ・ボフィン  『我らが共通の友』

ニコデマス・ボフィンの妻。ニコデマスがハーマンの遺産を相続してからは暮しが豊かになる。ロークスミスがジョン・ハーマンであることに最初に気付く。ニコデマスとともにジョン・ハーマンとベラ・ウィルファが幸福な結婚をするよう画策する。