本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「重厚で壮大な響き オットー・クレンペラー」ということで、クレンペラーがフィルハーモニア管弦楽団とニューフィルハーモニア管弦楽団を指揮した、名演をお聴きいただきます。

オットー・クレンペラーは、1885年ポーランドのヴロツワフに生まれました。最初ヨーロッパで活躍しますが、彼自身がユダヤ人であったため、ナチスドイツ政権樹立に伴いアメリカに亡命します。アメリカでは最初ロサンゼルス・フィルの指揮者となり、オーケストラの水準を上げ、またピッツバーグ交響楽団の再建にも貢献します。ところが1939年に脳腫瘍で倒れた後に心身ともに不安定になり、アメリカからの退去を余儀なくされます。第2時大戦後、クレンペラーはヨーロッパに帰還し、ハンガリーのブタペスト国立歌劇場の監督に就任します。実績を上げますが、共産党政権と衝突して辞任します。その後各地で客演を続けますが、1952年EMIのプロデューサー、ウォルター・レッグを感銘させ、EMIとレコード契約をすることになります。1954年からフィルハーモニア管弦楽団とのレコーディングを開始してからのクレンペラーは世界的な名声を得ることになりますが、同楽団との関係はニュー・フィルハーモニア管弦楽団と名前を変えてからも続きます。

コンサートでクレンペラーを取り上げるにあたり、私は、「クレンペラーとの対話」という本を読みました。インタヴュ−にクレンペラーが答えるというものですが、質問の内容が興味深く、クレンペラーも普段は見せることのない素顔を見せているように思います。マーラー、R・シュトラウス、ストラヴィンスキー、シェーンベルグなどの音楽家との関係も語られます。少し高価な本でなかなか古本屋でも見られない本だと思います。興味のある方は、お貸ししますのでお声をお掛け下さい。

最初にお聴きいただくのは、ブラームスの交響曲第1番です。私の大好きな曲で以前、ミュンシュ、アバドの特集で聴いていただいており、3回目の登場ということになります。クレンペラーの演奏はミュンシュのような熱い完全燃焼の演奏でもなく、もちろんアバドのような瑞々しい輝きのある音楽でもないのですが、ゆったりとした重厚な響きで聴かせる演奏だと思います。演奏時間は約44分です。

次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンの交響曲第2番、序曲「コリオラン」、「プロメテウスの創造物」序曲です。ベートーヴェンの2番は地味であまり演奏される機会がないのですが、クレンペラーは彼独自の解釈で魅力あるものにしているように思います。またその後の2曲の序曲の解釈もすばらしく、このアルバムを魅力あるものにしています。知り合いで大学のオーケストラの指揮をされている方にクレンペラーの名演は何ですかとお伺いしたところ、この曲と言われました。その後この曲を中古レコード店で見つけ、ヴィオロンでかけてもらいました。その時は別の盤(今日はオリジナルです)で最初に針とびをしましたが、マスターが、「針とびくらいでおたおたするんじゃない」と言われたので、引き続き曲の最後まで聴きましたが、途中私が、2つの序曲は今日は聴きませんとマスターに伝えるとマスターは、「最後まで聴かないの」と言われました。マスターの反応から、私は、マスターもこのアルバムがお好きで2つの序曲も好演と思われていると思いました。本日も通して聴くのがいいと考え、2つの序曲も含め全部を聴いていただくことにしました。演奏時間は約49分です。

ここで少し休憩をいただきます。

後半最初にお聴きいただくのは、ブルックナーの交響曲第4番の第1楽章です。クレンペラーには珍しく、かなり早いテンポの演奏ですが、その中で彼の特徴である壮大な宇宙が展開されます。演奏時間は約16分です。

プログラムの最後にお聴きいただくのは、ブルックナーの交響曲第9番です。この曲にはフルトヴェングラーの名演がありますが、壮大な宇宙が展開されるこの演奏が私にとっては魅力があります。ブルックナーの最後の交響曲で未完の曲ですが、最後の楽章がなくても十分に完成されており、ブルックナーの晩年の境地を反映しているようにも思います。この曲はクレンペラーのラストレコーディングですが、ラストレコーディングにはいくつか名演があると思います。ギーゼキングのメンデルスゾーン無言歌集、バルビローリのディーリアスのアパラチアなどです。これらのアルバムはいいものを後世に残したいとの演奏家の意志を感じるものです。皆様も是非一度お聴きいただければと思います。この曲は、ニューフィルハーモニア管弦楽団を指揮しての演奏です。演奏時間は約63分です。

本日もアンコール曲を用意させていただきました。クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏でヨハン・シュトラウスの曲とクレンペラー自作のワルツをお聴きいただきます。ワルツ「ウィーン気質」、喜歌劇「こうもり」序曲、メリー・ワルツです。

本日はアンコール曲をもう1曲用意しました。先程、ご来場いただいた方と話していると、その方は私のホームページを見ておられ、特に「クラリネット日誌」(実は私は4月からクラリネットを習っており、不定期にその日誌をホームページに掲載しているのです)を楽しみにしておられる。クラリネットの曲をよく聴かれるとのことでした。そこでその方へのプレゼントとして、今のところの私の究極の目標であるブラームスのクラリネット・ソナタ第2番をお送りしたいと思います。レコードはたまたま昨日、東京の中古レコード店で見つけたものです。演奏は、クラリネットがウラディミール・ソコロフ、ピアノがウラディミール・クライネフのメロディア盤です。

本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。