プチ朗読用台本 「ミコーバの爆発」について

 ディケンズは14の長編小説と未完の『エドウィン・ドルードの謎』という小説の他たくさんの中、短編小説を残していますが、中でも『ディヴィッド・コパフィールド』というディケンズが37、8才の頃に書いた小説は晩年に書かれた名作『二都物語』や『大いなる遺産』に比べて完成度の点では一歩譲りますが、魅力的な人物がたくさん登場し様々な感動的な場面が描かれています。
 この小説は主人公が成長して行く姿を描いた教養小説とも言われますが、ミコーバ、ヒープ、スティアフォースなど主人公以上にインパクトが強い人物が登場します。そのためこの小説の主人公は印象が薄いなどと評されるのですが、終始強い光を放ち続ける登場人物たちに主人公の影が薄くなっても仕方がないのかもしれません。この小説を勧善懲悪ものとして楽しむなら、絶好の場面が第52章の「爆発に立ち会う」にあり、そこでは強い個性を持つ、ミコーバとヒープが対決するのです。
 朗読会用台本を読まれる前に、よりよく理解して楽しんでいただくためにそれまでの物語の流れをごく簡単に紹介させていただきます。

主人公ディヴィッドは生まれた時に父親が死んでおり、悪人であるマードストンは人の良い母親に甘言を弄して父親のあとに収まります。先夫の子であるディヴィッドを疎ましく思ったマードストン姉弟は、あらゆる虐待をディヴィッドに繰り返しますが母親の愛情と、母親の死後は大伯母の愛情に支えられて多くの試練をディヴィッドは耐え凌ぎくぐり抜けます ディヴィッドは学校でスティアフォースやトラドルズと親しくなり生涯の友となるように思われましたが、スティアフォースの裏切りに遭い、乳母のペゴティ、ペゴティ氏、エミリーなどの幸福を儚い夢としてしまいます。 学校を卒業するとディヴィットは法律家となるための勉強を始めますが、大伯母の勧めで知り合いのウィックフィールド弁護士の家に下宿することになります。ウィックフィールド弁護士の事務所にはユライア・ヒープという書記がおり、初対面の時からディヴィッドは言葉と裏腹なヒープの言動を怪しみ対立します。ヒープの奸計で大叔母が破産寸前となりウィックフィールド弁護士も窮地に追い込まれますが、事務員となりヒープの事務所を密かに調査し悪行の証拠を掴んだミコーバはディヴィッド、トラドルズと共にヒープの悪事を暴いて行きます...。

それでは、「ミコーバの爆発」をごゆっくりお楽しみください。

プチ朗読用台本「ミコーバの爆発」(『デイヴィッド・コパフィールド』第52章より)

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