プチ朗読用台本「有頂天になったスクルージ」について

 ディケンズは14の長編小説と未完の『エドウィン・ドルードの謎』という小説の他たくさんの中、短篇小説を残していますが、31才の頃の書かれた中編小説『クリスマス・キャロル』はディケンズの他の小説と明らかに性格が異なる幻想文学的な要素も兼ね備えた楽しい作品です。マーレイ、過去、現在、未来の幽霊との対話で人間らしさを取り戻していくスクルージを傍目で見ているのは心地よく、ストーリーも明快で、そのためか名訳もたくさん残されています。
 朗読会用台本を読み上げる前に、この物語をよりよく理解して楽しんでいただくためにそれまでの物語の流れをごく簡単に紹介させていただきます。

 この物語の主人公、商人のスクルージは守銭奴とまで言われる欲深い老人で、商会を共同経営していたジェイコブ・マーレイを失ってからはさらに拍車がかかり、甥のフレッドがクリスマス・イヴの日に家に来るようにと誘っても、毒づくだけだった。そんなスクルージの将来を憂慮して、その夜マーレイが亡霊となって彼の前に現れる。彼は、自分の生涯は道を誤ったもので、いま後悔していると語る。
 かつて一緒に仕事をしていたマーレイとの会話は当人たちには深刻極まりない内容ですが、どこがユーモラスでマーレイとのやりとりがはじまるとすぐに物語に引き込まれてゆくことになります。過去の幽霊がスクルージの楽しかった少年時代、青年時代の辛い別れなどを目の前で展開して見せた時、スクルージの心の中に昔持っていた人間らしさが甦ってきます。現在の幽霊にスクルージに雇われている書記のクラチットやスクルージの甥の家庭の楽しい雰囲気やクラチットの一番下の息子のティムが病気で助けが必要なことを知った時にスクルージの意志は固まったようでした。

 それでは、「有頂天になったスクルージ」をごゆっくりお楽しみください。

プチ朗読用台本「有頂天になったスクルージ」(『クリスマス・キャロル』第4章、第5章から)