プチ朗読用台本 「デイヴィッドの決心」について

 ディケンズは14の長編小説と未完の『エドウィン・ドルードの謎』という小説の他たくさんの中、短編小説を残していますが、中でも『デイヴィッド・コパフィールド』というディケンズが37、8才の頃に書いた小説は晩年に書かれた名作『二都物語』や『大いなる遺産』に比べて完成度の点では一歩譲りますが、魅力的な人物がたくさん登場し様々な感動的な場面が描かれています。
 このページの「ミコーバの爆発」でとり上げた場面の他、スティアフォースが遭難する場面なども印象に残るものですが、『デイヴィッド・コパフィールド』で感動的な場面としてまず思い浮かぶのが、第13章の「決心の顛末」です。この章は、母親の死後、継父のエドワード・マードストンとその姉のジェーン・マードストンにセーラム学園での生活を打ち切られ、徒弟奉公に出されたデイヴィッドが、心の支えになっていたミコーバ一家との別れを機に、伯母の住むドーヴァーへと向かう決心をする。その後の顛末はどうなったかといった内容の章です。
 朗読会用台本を読まれる前に、よりよく理解して楽しんでいただくためにそれまでの物語の流れをごく簡単に紹介させていただきます。

 主人公デイヴィッドは生まれた時に父親が死んでおり、悪人であるエドワード・マードストンは人の良い母親に甘言を弄して父親のあとに収まる。先夫の子であるデイヴィッドを疎ましく思ったマードストン姉弟は、あらゆる虐待をディヴィッドに繰り返す。そうして母親の死後には、 マードストン姉弟はデイヴィッドが学校で学ぶ機会を奪い、長時間労働を強いられる将来に希望が持てない商会でデイヴィッドを働かせる。そんな逆境にあっても、ミコーバ一家がデイヴィッドの心の支えとなっていた。しかしミコーバ一家が再起を期してプリマスへと旅立つことを知ったデイヴィッドは、面識のない伯母に将来のことを託すために一大決心をしてドーヴァーへと向かう。
 10才そこそこの少年がまだ話したこともない伯母に会うために、遠く離れたドーヴァーに向かうということだけでも大変なことなのですが、途中、若い男にお金を取られドーヴァーまで歩いて行かざるを得なくなったり、自分の上着を売ってパン代にしようとして店に入ったところ悪魔に身を売り渡したとの評判の人物と一日を過ごすことになったり、暴漢にスカーフを奪われたりし、息つく暇がない展開になっています。さて、デイヴィッドは無事伯母に会うことができて、将来の展望が開けたのでしょうか。

それでは、「デイヴィッドの決心」をごゆっくりお楽しみください。

プチ朗読用台本「デイヴィッドの決心」(『デイヴィッド・コパフィールド』第13章より)

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