プチ朗読用台本 「メアリーと愛息」について

 ディケンズは14の長編小説と未完の『エドウィン・ドルードの謎』という小説の他たくさんの中、短編小説を残していますが、ディケンズが29才の頃に書かれた『バーナビー・ラッジ』は彼の5作目の長編小説です。この小説は、1780年のゴードンの騒乱を中心に据えた歴史小説と言われますが、推理小説的手法やピカレスク小説的手法も見られる娯楽性に富んだ小説です。この小説はそれらの部分だけでも楽しめる小説なのですが、障害を持つ主人公バーナビーとその母親であるメアリーの母子愛を心温まる筆致で描いた部分が秀逸で読後印象に残ります。今回の朗読用台本では最初にラッジ親子の生活が概観できる箇所を、次に昔殺人を犯し追剝まで身を落としたバーナビーの父親が突然彼らの前に現れるところを取り上げます。そして最後にバーナビーと母親が父親に追い立てられて住み慣れた家を離れ、お供におしゃべり烏(からす)のグリップを連れてロンドンにやって来るところまでを取り上げています。この後、バーナビーはゴードンの騒乱に知らないうちに巻き込まれ、怪力であることを暴徒の指導者に買われ反乱の中で主導的な役割をさせられることになります。騒乱の鎮圧後、バーナビーは絞首刑になるところでしたが、ゲイブリエル、ヘアデイル氏、エドワードの懸命な努力によって処刑をまぬがれ、その後は母親とともに農場で働くことになります。

朗読会用台本を読み上げる前に、よりよく理解して楽しんでいただくためにそれまでの物語の流れをごく簡単に紹介させていただきます。

 物語は、騒乱の首謀者であるジョージ・ゴードンとその秘書ガッシュフォードが引き起こす騒乱の話、ルーベン・ヘアデイルが22年前に何者かに殺された際に一緒に殺されたバーナビーの父親が実は生きていて生活に困り追剝をしているという話、母親のお腹の中にいる時に母親が暴行を受けたために障害があるが明るい青年バーナビーと彼を心から愛している母親メアリーの生活の話、この3つの話が同時に進められて行きます。ある晩、幼なじみのゲイブリエル・ヴァーデンがメアリーを訪ねて来た時に、メアリーは昔に殺されたと思われていた夫の突然の訪問を受けます。メアリーは夫の様子を見て嫌悪感を感じますが、ゲイブリエルに本当のことを言えません。やがてバーナビーが帰宅しゲイブリエルとの軽妙な会話が始まりますが、それでもメアリーの不安な様子は変わりません。

それでは、「メアリーと愛息」をごゆっくりお楽しみください。


プチ朗読用台本「メアリーと愛息」(『バーナビー・ラッジ』第5章、第6章、第17章、第45章、第46章、
第47章、第48章より)

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