プチ小説「青春の光86」

「は、橋本さん、どうかされたのですか」
「やあ、田中君、年末年始は楽しく過ごせたかい」
「ええ、一応、8連休あったので、大掃除もしたし、家族とゆっくり過ごせたし、神社の参拝もできましたし、いつもこれくらいの期間あればいいのにと思います」
「船場君はそれ以外に、『こんにちは、ディケンズ先生』第3巻、第4巻の校正、ホームページのやり替え(ホームページビルダー19(windows7)→ホームページビルダー21(windows10))などで大変だったらしい」
「そうですか。でも本の出版は、船場さんのお母さんの誕生日に合わせて出版すると宣言されているので、年末年始で片づけなければならないと思われるのはもっともなことだと思いますが、ホームページの方はそんなに焦らなくてもいいんじゃないですか」
「いや、windows7の保証・サポートが1月14日で切れるということだから、早くしないといけないと思うよ。だいたい船場君の今の活動のすべてがホームページから始まっているというのは、田中君もわかっているだろ」
「そうかなぁ。じゃあ、試しに順番に挙げていきましょうか」
「そもそも、船場くんがホームページを始めたのは、出版社に持ち込んだ、クラシック音楽に関する小文が没になり、それを何とか不特定多数の人に閲覧してほしいということからだった。船場君は、そのほぼ同時期に阿佐ヶ谷の名曲喫茶ヴィオロンでLPレコードコンサートを開催するようになった。もちろんホームページでその告知をしている」
「船場さんは、ホームページを始めてしばらくして、写真を掲載するようになったんでしたね。スキャナ取り込み、JPEG圧縮なんかの方法を同僚の人から習って、写真掲載のページを始めたんでしたよね。最初は1999年頃からライカM6で撮り始めた風景写真を掲載していたけれど、超広角レンズエルマリート21mmで撮った京都のお寺の写真を掲載するようになりました。最近はM9で撮った写真を掲載しています」
「船場君がホームページに短編小説を掲載し始めたのは、2005年ごろだったかな。京都の友人に添削してもらっていますと言っていたが、3年ほどして、その方の仕事が忙しくなって、短編小説はやめて、プチ小説を書くようになった」
「A4の用紙に収まるくらいの文字数の小説ということでしたね」
「そう、それで、最初は一話完結の小説を書いていたが、短編小説よりさらに効率が悪いことに気づいた」
「それはどういうことですか」
「登場人物を考えても、すぐに終わってしまう。それで船場君は連載小説の形でいくつかの小説を書いた。「こんにちは、ディケンズ先生」はプチ小説の15番目の小説だから、その連載小説の走りというところだ」
「いつごろのことですか」
「2008年頃らしい。そうして75話になったところで、出版社に原稿を送ったところ、流通させるが、自費出版でという条件で出版に漕ぎつけた」
「でも、出版社に原稿を送っても出版してもらえるとは限らないのではないですか」
「船場君は大学の頃にその出版社の新聞広告を見ていて、自分の小説なら扱ってもらえるのではと考えたらしい。本気で企画出版をしてもらえると考えていたようだ」
「でも企画出版にはならず、流通する自費出版ということになりました」
「あとは自分で多くの人に読んでもらおうと試行錯誤した。自分で公立図書館に行って受け入れてもらうように頼んだり、出版社から大学図書館に代行発送してもらった」
「『こんにちは、ディケンズ先生』(近代文藝社)はあまり売れませんでしたが、多くの図書館に受け入れてもらっています」
「第1巻と第2巻の改訂版が幻冬舎ルネッサンス新社から出版されて、3月には第3巻と第4巻が同時に同社から同時に出版される。船場君のことだから、ホームページで大々的に宣伝することだろう」
「ホームページの力は微々たるものかもしれませんが、自分で宣伝できるというのはすばらしいですよね」
「他に槍・穂高登山をしていた頃には、登山の体験記やその時に撮った写真を掲載していた。またディケンズ・フェロウシップの会員になった頃は張り切っていて、10の朗読用台本を作成している」
「ミコーバの爆発という朗読用台本を故荒井良雄先生に朗読していただいたと船場さんは喜んでおられました。どちらももうされないんでしょうか」
「登山はトレーニングが必要だから無理だろう。でも朗読会の方は、万一『こんにちは、ディケンズ先生』が売れたら、原稿を手直しして、荒井先生の知り合いの方に読んでもらおうと考えていると船場君は言っていた。荒井先生に紹介してもらった人がいると言っていた」
「あとはクラリネットの演奏本の感想文なんかがありますね」
「まあどちらも専門家から見たら稚拙なものかもしれないけど、自分で楽器が演奏できる、自分で読んだ本の率直な感想を提示できるというのは貴重だと思うよ。それにディケンズ・フェロウシップの会員の人と一緒に演奏したりして楽しそうじゃないか」
「そうですよね。そのwindows10へのやり替えも無事に終わったということで、船場さんはますますホームページでいろんなことをされるでしょうね」
「それは間違いないが、『こんにちは、ディケンズ先生』がもっと売れれば、船場君のモチベーションが上がり、思いもつかない発想が船場君から飛び出してくるかもしれない。船場君の創作意欲を引き出すためにも、船場君の本が売れることを願うばかりだ」
「ぼくもあちこちの神社でお祈りしておきます」