プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 舞台があれば自由に活動できる編」
わしは幼稚園の頃と小学6年生の頃にそれぞれ「ピーターパン」、「1971年度重大ニュース」という演劇に出演したんやった。役はフック船長と横井庄一やったのを覚えてるけど、舞台の様子や台詞がどうやったかは記憶しておらん。年一回のことで練習を重ねたんやと思うけど台詞とか何も覚えとらん。というのもわしは人見知りの恥ずかしがりやったから、人に励まされたり褒められて舞台で大きな声を出して熱演するのは無理やと思って適当にやり過ごしたんやと思う。ほんでー、ピーターパンやりたい人と言われて、はいはいはい、わしやりたいと言わんかったんやと思う。中学3年生の文化祭にはクラスメイトが脚本を書いた「長屋での出来事」という劇が体育館で上演されたんやが、出演することなく裏方をしていたと思う。エンディングでポール・モーリアの「エーゲ海の真珠」が流れて最後の場面が印象に残ったんで、エンディングの音楽って大切やなと思ったもんやった(もちろんどんな話やったかは全然覚えとらんし、なんで「エーゲ海の真珠」がバックで流れたんかわからん)。そんな人前で話をするのが苦手なわしも高校の英語のリーダーの授業で翻訳したり、社会人になって人前で発表するようになると苦手意識がなくなって自分で何かを発表したくなって来たんやが、そういう場が見つからんかった。船場は大学時代に語学や専門科目の勉強を地道にやって、段々人前で話すことができるようになったらしい。そやけど就職してから何度か発表の機会があったが、プレゼンテーションは評価されなかったみたいや。あいつ、演劇するようなタイプやない(容貌、情熱共に)けど何かを発信したいと今も孤軍奮闘しとるみたいや。どんな事やって来たんか、訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、私がどんな風に情報発信したり、公の場で来場された方にどのような楽しいことを提供して来たかということですね。そうやで、あんたはわしと同じで顔が不細工やから、舞台には上がらん方がええと思うけど自分で情報発信したいという気持ちはよーわかるわ。そうですよね、私は不細工やから演劇には向かない、ほっといてください。でも人前で何かしようと思うと自分の顔のことは棚に上げておかないと二の足を踏むことになります。どーしょーかな、不細工やからやめとこかということになりかねません。ほんで、あんたは恥を忍んで顔を出すことにしたんやな。まあ、そうとも言えますが、人前で話をしてこちらが言うことに頷いていただけるとやってよかったという気になります。で、あんたはどんな活動をしとるんや。ホームページで自作の小説を書いたのを掲載したり、自分で写した写真を見ていただいたりするのが主な活動ですが、たまには人前で話て楽しんでいただけたらと思って、いろいろやって来ました。名曲喫茶ヴィオロンで開催して来たLPレコードコンサート意外にか。もう10年近く前になりますが、名曲喫茶ヴィオロンで、私のホームページに掲載しているプチ朗読用台本「ミコーバの爆発」と「カートンの愛情」を故荒井良雄先生に朗読していただいたことがあります。会場で荒井先生から、この人たちに朗読を頼めばよいと言われたのですが、小心者の私は有名な劇団員の方に電話を入れることが出来ずにそのままになっています。今となっては後の祭りという感じです。そうなるとやっぱりLPレコードコンサートしか残っていないことになるなぁ。でも、3年間開催されていませんし、コロナが完全に終息していない状況で再開しようか迷います。また長い間開催していないので、舞台として名曲喫茶ヴィオロンを提供していただけるか確認が必要だと思います。今更、恨み言を言っても始まらないのですが、2020年3月に『こんにちは、ディケンズ先生』第3巻、第4巻が発売されて、代行発送していただいた大学図書館と20ほどの公立図書館に受け入れられたら、いろんなことをやってみたいと張り切っていたのですが、この3年間何もできていないのです。しかもあと1ヶ月もしないうちに64才になります。人それぞれ中年の頃に自分の人生のプランを固めて40~60才の頃に開花させるのですが、40代後半から少しずつ準備して来たことがコロナで粉砕されて、夢や希望が無くなりかけているという感じです。船場の気持ちもようわかるけど、人間頑張ってやったことがいつもうまくいくとは限らん。むしろ失敗の方が多いんとちゃうか。今までしたことが失敗とは言わんが、二進も三進も行かんようになったら、他のことで頑張ってみるのも必要やないかと思うんや。それはなんですか。お前がヴィオロンで朗読会をするとか、クラリネットの発表会をするとかやな。それは朗読にしてもクラリネット演奏にしても人に見たり聞いたりしてもらうレベルに達していません。それは、甘い。ひたむきに努力するというのがないから、あんたはひとつも物に出来なんだということやないか。趣味でしてまんねんというのなら、それは時間を割いて会場に来てくれる人に失礼やと思うわ。兄さんの仰る通りだと思いますが、ひとつのことに集中して物事をやり遂げるのは40代までなら可能だったでしょう。でも私はまもなく64才なので、出来る範囲で頑張ってみるとしか言えないのです。まあ、嘘をつくのよりええんかもしれんけど、中途なもんで趣味でやってまんねんで誤魔化そうとするんやったら、最初からせーへん方がええよ。やる限りはひとつひとつきっちり準備しておかんとあかんよ。はい、心しておきます。