京都五山の送り火探訪 1年目

私は京都市民ではありませんが、京都の伝統行事に興味があり、祇園祭には、夜(宵山)昼(山鉾巡航)合わせて数回行ったことがあります。しかしながら京都五山の送り火には、今まで出かけたことはありませんでした。というのも午後8時から始まるということと交通が不便ということがあり、五山送り火を見終わって私が住む高槻市に帰ると、時刻は午後11時をまわり次の日に支障が出ると考えていたからです。

そういうことがあって、京都五山の送り火(以下、五山送り火と書きます)を見るために京都に行くということは今までにはありませんでしたが、今年は父親が亡くなったということもあり、敬虔な気持でこの伝統行事を体験したいと思い、準備をした上で当日を迎えることにしました。

五山送り火は、「大文字」「妙」「法」「舟形」「左大文字」「鳥居形」の6つの山の送り火が8月16日の夜8時から順番に点灯されます。「妙」と「法」を「妙法」としてひとつと考え、五山の送り火となるのですが、被写体としてはひとつにはならず、6つの被写体を追うことになります。私は、当日だけですべてを滞りなく撮り終えられるなどと考えることは決してなく、7月30日には下見にも行きました。

インターネットの情報をメモ用紙に書き込み40年ほど前に購入した京都市の地図を持って出掛けました。阪急電車で河原町まで行き、京阪電車で出町柳に出ました。葵橋の東側に立ち東を眺めると大文字山の山肌に「大」の字が見えました。

そこからどう行こうかと思ったのですが、とりあえず歩いて高野橋まで行くことにしました。ここから「法」がよく見えるとサイトに書かれてあったからで、確かに橋から北を望むとよく見えました。

その次に「妙」の字を探したのですが、ノートルダム女子大近辺という情報しかなかったので、高野橋から下鴨本通に出て、ノートルダム女子大の西側を通過して北山通を(東に行けばよかったのですが)西に行きました。そのまま北を見ながら、堀川北山まで行きましたが、「妙」と「舟形」は見つかりませんでした。ここで西へと行くことにして、「左大文字」は金閣寺近辺からよく見えることを知っていますので、「鳥居形」を探すことにしました。

インターネットの情報では、松尾大社近くの松尾橋か嵐山の渡月橋からよく見えるとありましたので、とりあえず松尾橋に行ってみました。後で写真を見ていただきますが、山肌にくっきり鳥居の形が見えるというものでない(もちろん点灯されると浮かび上がりますが)のでこの時はわかりませんでした。ということで、「大文字」「法」の撮影スポットを確認したということでロケーションは終わりました。

8月16日は仕事を終えてからすぐに阪急電車で京都に向かいましたが、桂駅を過ぎたあたりから雲行きが怪しくなり、西京極駅近くでは傘をさす人が見受けられました。「五山送り火が雨天中止になったのは聞いたことがない」と私は独り言を言いましたが、内心では豪雨だったら火が消えるだろうし無理ではないかと思っていました。河原町駅で下車し、京阪電車には乗らずに鴨川に沿って西側の遊歩道を北上しました。出町柳に着くまでに撮影スポットが見つかるかもしれないと思ったからでした。

丸太町橋をくぐる頃には本降りとなり、荒神橋をくぐる頃には豪雨になりました。まわりにはそれにもめげず送り火を一目見ようとする人がたくさんいました。一番多かったのは学生でしたが、西洋、東洋を問わずたくさんの観光客もたくさんいました。中には浴衣のカップルもいましたが、老若男女、邦人外人を問わず一様に雨が降り注ぎ、傘をさしている人もみんなずぶ濡れでした。

私は、午後6時50分頃に賀茂大橋の西側南に立ち点灯を待ちました。気になったのは、荒神橋あたりで大文字山にサーチライトの灯がちらちらしていたのに豪雨になってしばらくするとまったく見えなくなったことです。ガスがひどいんだなと思いましたが、送り灯は見えるだろうと思っていました(雨煙の中から浮かび上がる送り火を見るのも乙なものとその時は浮かれた気持でいました)。しかしながら午後8時20分になっても灯が見えず、この豪雨では点火できても火が消えるだろうと思いましたし、帰宅する人がちらほら見えましたので、私は、また来年来ることを誓って、その場を後にしました。傘をさしているとはいえ、豪雨(大雨警報が出ていたようです)でしたので、濡れ鼠となりました。日頃の行いが悪いからなんだろうなと反省しながら歩いていると、地下鉄の今出川駅にたどり着きました(下の写真は8月19日に撮影しました)。

というわけで、残念なことに私は今年の五山送り火をまったく見ることはできませんでした(「妙」「法」「舟形」「左大文字」「鳥居形」はガスで見えないということはなかったようで、こちらに行ったら見られたかもしれませんが)。それでも駄目だった時にすぐに切り替える私は、来年のために検証をすることにしました。来年のために、撮影スポットを確定しておく作業をしたのです。

8月19日に 出町柳 ― 松ヶ崎 ― 上賀茂神社 ― 金閣寺 ― 松尾橋 近辺をまわって来ましたが、「妙」はやはり宝ケ池自動車教習所の前が一番よく見えます。

「舟形」は上賀茂神社近くの御薗橋からも見えますが、そのひとつ南よりの上賀茂橋からもよく見えます。

「左大文字」は千本北大路から西大路通に入る曲がり角のところが「大」の字がよく見えるので個人的にはここがお勧めです。

最後に「鳥居形」を探して、渡月橋、松尾橋に行きましたが、渡月橋ではどこにあるのかがわかりませんでした。松尾橋を渡り始めた時もどこにあるのかわかりませんでしたが、友人から内田病院からよく見えたときいたので、3分のほど渡ったところで北側を見たところ、山肌が禿げたところがあったので、これなんだと思いました。

そういうことで、1回で終わってしまうということはなく、しばらく五山送り火を楽しむことができそうです。というのもロケーション以外にもいくつかの難しい問題があるからです。

大文字の点灯から5分おきに順番に点灯していくのですが、1時間ほどで消えるということですので、一度ですべてというのは難しいと思います。2、3回(2、3年)に分けて撮影するのがよいと思います。

今回は雨天で観光客は少なかったのですが、普通なら人が多く、また移動する観光客で車が大渋滞となると聞いています。複数の撮影スポットで撮るなら、タクシーの運ちゃん頼みではなく、移動の仕方も考えておく必要があるでしょう。

私は40年余り写真撮影をしていますが、遠くの光る被写体をどのように撮ればよいのかがよくわかりません。露出計を合わせればよいのでしょうが、露出を絞り込んでどのようなシャッタースピードで撮れるのか、また三脚が必要なのかは現場でやってみないとわからないと思います。三脚が必要であれば、早くから茣蓙をひいて場所取りをしなければならないかもしれません。

五山送り火の撮影はとても難しいと思います。天候、ロケーション、撮影場所の確保、撮影技術などなど。でも1回で終えようと考える必要はなく、数年がかりで楽しみながらよい写真を残せたらと思っています。

2年目はこちら

3年目はこちら

4年目はこちら

2022年はこちら