チャールズ・ディケンズの長編小説について

昨年(2011年)10月にディケンズ・フェロウシップの会員に入れていただいて1年が経過し、10月20日に
天理大学で開催される秋季総会を楽しみにしている(総会も楽しみですが、天理大学の図書館でディケンズの初版本も
展示されるということなのでこちらも楽しみです)のですが、学生時代にディケンズという作家に出会い、一旦は
ディケンズから離れた私が再びこの偉大な作家の長編小説に親しみを感じるようになったかを語るのも無駄ではない
と思い、この小文を書くことにしました(註 リンクをはっているもののほとんどは読後すぐに自分のホームページに
掲載したものです)。

私がディケンズに興味を持ったのは、実は岩波新書の『世界の十大小説』(サマセット.モーム著)の中で紹介されている
『ディヴィッド・コパフィールド』を読んでからです。それまで子供向けの本でディケンズのいくつかの小説を読んだことが
あったのですが、最後まで読んだことがありませんでした。当時、書店で買える本としては中野好夫訳(新潮文庫)しか
なかったので、それを読みました。面白かったので、『大いなる遺産』 『二都物語』 『クリスマス・カロル』(以上新潮文庫)
『オリヴァ・トゥイスト』(講談社文庫)を読み、大学図書館で『ピクウィック・クラブ』(三笠書房)を借りて
読んだのですが、書店で簡単に手に入るディケンズの小説が他になかったためディケンズについてそれ以上読み進むこと
はなく、社会人になると他の西洋文学を読む機会もほとんどなくなりました。

それでも学生時代に読んだ、フィールディングの『トム・ジョウンズ』やオースティンの『自負と偏見』
読み返したりしていましたが、私が再度西洋文学に対する情熱(少し大袈裟かもしれませんが)を持つようになった
のは、ディケンズの作品を再び読んだからではなく、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』を読んだから
でした。大デュマのこの作品はそれまで読んだどの小説よりも面白く、彼のもうひとつの代表作である『ダルタニャン
物語(全11巻)』
(講談社文庫)を是非読みたいと思い、入手するために神田の古書街を逍遥しこれはという古書店
があれば飛び込むようになったのでした。ダルタニャンは全11巻セットが小宮山書店で見つかりました。その後、
大学の時に読んだ『ピクィック・クラブ』や他のディケンズの作品の古書が手に入らないものかといくつかの古書店を
訪ねましたが、風光書房という古書店で『骨董屋』(三笠書房)と『爐邊のこほろぎ』(岩波文庫)を購入することが
できました。店主Sさんは大学でフランス文学を専攻されたので、マラルメやヴェルレーヌなどのフランスの象徴派の
詩人の話をよくされるのですが、もう少し接しやすい、アナトール・フランスの『舞姫タイス』(角川文庫)や
ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』(集英社)それから意識の流れのジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』
(伊藤整訳 新潮社)やヘルマン・ブロッホの『ウェルギリウスの死』(集英社)などを後日購入しました。ディケンズの
作品では、『オリヴァ・ツィスト』(新潮文庫)『クリスマス・カロル』(角川文庫)『デエヴィッド・カッパフィルド』
(國民文庫刊行會)『二都物語』(岩波文庫)『大いなる遺産』(中央公論社)もここで購入しました。

こうして神田の古書街だけでなくインターネット(日本の古本屋)も利用して、なんとかディケンズの長編小説の翻訳
すべてを揃えることができました。いろんなディケンズの著作に接することができるようになると、最初ディケンズに
接した時に感じた懐の深さが感じられるようになり、ディケンズに対する親近感や尊敬の念が甦って来たような気がします。
以下、私が持っている(未読のもの(2つ)もあります)ディケンズの小説を書かれた順に掲載します(中編小説ですが
『クリスマス・キャロル』も掲載します)。

1.ピクウィック・クラブ(The Posthumous Paper of the Pickwick Club 1837)
  『ピクウィック・クラブ』北川悌二訳(三笠書房 1971)
  『ピクウィック・ペーパーズ』田辺洋子訳(あぽろん社 2002)
  『英国紳士サミュエル・ピクウィク氏の冒険』梅宮創造訳(未知谷 2005)
2.オリヴァー・ツィスト(Oliver Twist 1838)
  『オリヴァ・ツィスト』中村能三訳(新潮文庫 1955)
  『オリヴァ・トゥイスト』小池滋訳(講談社文庫 1971)
  『オリヴァー・ツイスト』加賀山卓朗訳(新潮文庫 2017)
3.ニコラス・ニクルビー(Nicholas Nickleby 1839)
  『ニコラス・ニクルビー』田辺洋子訳(こびあん書房 2001)
4.骨董屋(The Old Curiosity Shop 1841)
  『骨董屋』北川悌二訳(三笠書房 1977)
5.バーナビー・ラッジ(Barnaby Rudge 1841)
  『バーナビー・ラッジ』小池滋訳(集英社 1975)
6.クリスマス・キャロル(A Christmas Carol 1843)
  『クリスマス・カロル』村岡花子訳(新潮文庫 1952)
  『クリスマス・カロル』安藤一郎訳(角川文庫 1954)
  『クリスマス・キャロル』中川敏訳(集英社 1975)
  『クリスマス・キャロル』池央耿訳(光文社 2006)
7.マーティン・チャズルウィット(Martin Chuzzlewit 1844)
  『マーティン・チャズルウィット』北川悌二訳(ちくま文庫 1993)
8.ドンビー父子(Dombey and Son 1848)
  『ドンビー父子』田辺洋子訳(こびあん書房 2000)
9.デイヴィッド・コパフィールド(David Copperfield 1850)
  『デエヴィッド・カッパフィルド』平田禿木訳(國民文庫刊行會 1928)
  『デイヴィッド・コパフィールド』中野好夫訳(新潮文庫 1967)
  『デイヴィッド・コパフィールド』石塚裕子訳(岩波文庫 2002)
10.荒涼館(Bleak House 1853)
  『荒涼館』青木雄造・小池滋訳(筑摩書房 1975 ちくま文庫 1989)
  『荒涼館』佐々木徹訳 (岩波文庫 2018)
11.ハード・タイムズ(Hard Times 1854)
  『ハード・タイムズ』田辺洋子訳(あぽろん社 2009)
12.リトル・ドリット(Little Dorrit 1857)
  『リトル・ドリット』小池滋訳(集英社 1980 ちくま文庫 1991)
13.二都物語(A Tale of Two Cities 1859)
  『二都物語』佐々木直次郎訳(岩波文庫 1937)
  『二都物語』本多顕彰訳(角川文庫 1966)
  『二都物語』中野好夫訳(新潮文庫 1967)
  『二都物語』松本恵子訳(旺文社文庫 1971)
  『二都物語』加賀山卓朗訳(新潮文庫 2014)
14.大いなる遺産(Great Expectations 1861)
  『大いなる遺産』山西英一訳(新潮文庫 1951)
  『大いなる遺産』日高八郎訳(中央公論社 1967)
  『大いなる遺産』佐々木徹訳(河出文庫 2011)
15.互いの友 我らが共通の友(Our Mutual Friend 1865)
  『互いの友』田辺洋子訳(こびあん書房 1996)
  『我らが共通の友』間二郎訳(ちくま文庫 1997)
16.エドウィン・ドルードの謎(The Mystery of Edwin Drood 1870)
  『エドウィン・ドルードの謎』(講談社 1977)

以上の他に原書を5冊購入していますが、こちらは今のところ参照しただけです。
1.Oliver Twist(PENGUIN CLASSICS)
2.Dombey and Son(PENGUIN CLASSICS)
3.Bleak House(PENGUIN CLASSICS)
4.Little Dorrit(PENGUIN CLASSICS)
5.Great Expectations(PENGUIN ENGLISH LIBRARY)

以上、ディケンズの長編小説に興味をお持ちの方に参考になれば
と思い、掲載させていただきました。
秋の夜長にディケンズの小説を読んで心を豊かにする。
それは、何とすばらしいことでしょう。